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耳を傾ける(臨床心理面接特論(1)第2回)

自分自身の問題に気づかないで、他者の問題を抱えることは不可能だろうと思う。

 

心理支援。耳を傾ける。クライアントの話に耳を傾ける。基本として繰り返し。実際に耳を傾けることは容易ではない。日常の会話とは違っている。言葉として知っている人が多いだろう。聴くだけなら誰でも出来ると思っている人は多い。しかし容易ではない。イライラしたセラピスト。どんな風に異なるのか。応答はどのように進行するか。看護師とのセラピーの場面。以前に医師や看護師に対し心理療法で話をする機会があった。耳を傾けることでセラピーは進んでいく。質疑応答。イライラした時には?どういう処置をすれば良い?訴えがあった時にクライエントの話に耳を傾ける。なかなか上手く伝わらなかった。自分で出来る工夫を教えて欲しい?あまりにも医学モデルが身に付いてしまっている。うつ状態に陥っている、とは異なる。すぐ治療モデルに頼る。頭痛の訴えがあれば問診と検査により判断し処方するという医学モデル。クライアントの訴えに耳を傾けていくことでセラピーがどう進むのか?病院の精神科外来や心療内科。スクールカウンセラーも。セラピストとしては実際の事例について話をするのは大変抑制的。よそに漏れることはないと思っているから安心して吐き出せるというのは重要。架空の事例について話す。医師看護師に心理療法について話す。心理療法のモデルは医学モデルと異なる。なので架空の事例を。実際に即した事例。
イライラを訴えて来談した女性中堅看護師。大したことでもないのにイライラして若い看護師を怒鳴りつけた。自分を持て余している。色々な対処の仕方が。最近忙しすぎる?とても忙しい部署?そこで話が終わるかもしれない。慣れないスタッフが多いの?誰にでもある?支持するのもよくある。気分転換が良い、一緒に出かけよう。美味しいものを食べてよく眠るのが一番。そういうアドバイスも。私も同じ、という人も。思い切って2日くらい休んだら、という経験によるアドバイス。このようなことが心理療法で行われることもあるが、アドバイスや支持や説得などで解決するのは底が浅い場合。ではセラピストは?もう少し詳しく伺ってもいいですか?その時のお気持ちをもう少し語ってもらえませんか?そういう応答でクライエントは更に話を続けていける。自分を深めて話をすることが出来る。少し年下の看護師が新人類で、とにかく苦手で嫌、それでイライラ。同僚が上手くやっているので余計にイライラ。セラピストはある同僚がとにかく苦手でなんだか嫌、というわけなのですね、と話す。派手な人です、などと話を続いていける。セラピストは安易にアドバイスをしたりしないで、同じ場所に常にとどまる。時間についても、1回1時間などと限定する。1週間に1回2回と限定。クライエントと約束をして、決まった時間に決まった場所で。耳を傾ける。セラピーの特徴。友達と話していると長い話になることが多いけれど。時間を区切り次回も継続する、インターバルの時間を置くことも大事。クライアントの変化も。
次回からもセラピストはひたすらクライアントに耳を傾ける。おしゃれが好きなどが嫌になると話をしだす。看護師は地味に清楚にしていなければならないのに、同僚は享楽的などと話す。セラピストは怒りや他者非難にも耳を傾ける。簡単にアドバイスをしたり意見をしたりしない。そうすると話が切れてしまう。クライアントが問題を自分で掘り下げていくことが出来るように。セラピストが同行することで可能性を開拓し一緒に歩く。一人で考えている時には堂々巡りになるが、セラピストの態度に支えられる。客観的に自分をみてはっと驚く。クライエントの表情やしぐさ、沈黙なども多くを語っている。洋服の色なども反映。聴くのは聴覚だけでなく視覚も含んで感じる。クライエントの心身の声に耳を傾ける。その人全体を感じながら耳を傾ける。様々なものを含めてその人を聴く、という形で。セラピストの心の内からのことにも。心身の声に耳を傾けて感情を受け止めると、クライエントは少しずつ変化をする。厳しく非難している人が、患者の評判が良いということにも気づく。自分を楽しく過ごさないと周りも明るくなれない、と考えを進めることも。あまりお化粧をしていなかったクライアントが薄化粧をしたり洋服を変えたりする。やがてクライエントからはイライラしなくなったからセラピーを終えたい、と。何回かお会いすると、変化を遂げていくことが普通。非常に簡単な架空の事例だが、心理療法のプロセスをよく表している。イライラしている自分を持て余している。セラピストの態度に支えられて、背後の自分の価値観を再検討する。地味、真面目、倹約、献身、清楚という生き方に価値観を。自分自身を楽しく生きるという。楽しむことに罪悪感を感じて、人に尽くしても自分は楽しまない、問題を感じ始めている。そのような課題を抱えていたところに、自分と違う面を持つ後輩と接してしまう、自分の理想面を見ていてイライラする。自分の課題からの不適応。社会的悪口を聴いてくれるセラピストに支えられて内省して。
セラピストの役割は?クライエントの自己治癒力は?クライエントの最初の訴えである、イライラするという話から同僚の悪口へ、看護師の理想に、自分の人生の価値観へ、そして統合へ。セラピストは元に戻ろうとは言わずに、受け止め続ける。同僚に悪口ばかり言っているが、imageの表現からすると、自分に足りない側面について熱心に語っていた、とも言える。自分の悩みに関係ない?実は自分の深い内面の悩みを。ユング。患者自身の中にある創造的な。意識と無意識を過程。自我エゴ。自己セルフ。クライエント自身の心の底に在る潜在的可能性を。無意識の領域に自己セルフが存在し自己治癒力を持つ。人間の意識の方は一面的でもあるが。自分の意識は何らかの方法を見いだせず行き詰まっている時に。無意識への信頼。自己セルフの可能性への信頼。クライエントの内面から生じることを何でも受け入れる態度によって、カルフの言うところの、自由にして保護された空間が用意される。無意識の領域にある自己治癒力が働くようになる。成長へと向かう。自己実現傾向が。イライラという症状は、自己実現傾向との闘争により生じる。一定の安定を持っていた自我エゴが新たな可能性を統合しようとする。セラピストは心身の声に耳を傾けて、示される感情を受け入れることにより、自己セルフを保護する。意識の中心である自我エゴと、意識も無意識も、自己セルフ。クライエントの話に耳を傾けることは、どの立場の心理療法でも基本。治療者の取るべき基本的態度。ロジャース。パーソンセンタードアプローチ。ロジャース。その人を傷つけているのは何であるのか。何が重要な問題なのか。どんな経験がなのか、を知るのはクライエント自身である。自分の賢明さや知識を見せつけなくなると、クライエントへの信頼が芽生え始める。フロイト。聞く態度として、平等に漂う注意を。大切な連想を聞き逃さない為に。クライエントのどんな言葉にも敏感に即応できるような心の態度。評価をしない。クライエントの話にひたすら耳を傾ける。心理療法そのものの基本。
セラピスト自身の心の影。クライエントの話に耳を傾ける、そのまま受け入れる。自由にして保護された空間が用意される。自己治癒力が働き始める。受け身でいることはなかなか出来るものではない。フロイトもユングも長い間をかけて、自らの問題と取り組んでいる。セラピストの側からの感情の必要性。フロイトに説いたのはユング。教育分析。精神分析やユング派分析の教育を受ける場合には、クライエントとして300時間受けることを。自分自身の抱える葛藤や問題の自覚なくして、セラピストはクライエントを抱えることはできない。クライエントが心理的混乱を。自らも分析を受けて、影や問題に耳を傾けることを。セラピストの心身が語ること。古代において医者は自らの痛みによって癒やした。教育分析の目的は、共感が流れ出す傷を開く。共感的理解は生易しいものではない。応答の技法を身につける、といった小手先のものではない。どれだけの深さを持った共感的理解がなされたのか、クライエントには見抜かされる。共感的理解。話を深めていける。自分自身の問題に気づく過程。

 

臨床心理面接特論〈1〉心理支援に関する理論と実践 (放送大学大学院教材)

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