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臨床心理学と心理療法(心理と教育へのいざない第10回)

やはり河合隼雄先生は様々な影響を多方面に与えられたのだろう。私は京都大学に居たことがあるが、なぜ直接会って話をしなかったのだろうかと後悔は尽きない。

 

大場登。臨床心理学と心理療法。心理と教育コースで今後の勉強へ誘うための。心理療法について一番基礎となる辺りを。ある意味独特の営みでもあるので、色々と質問してもらいPersonalな語りでのInterview形式も。個性も重要な要素。勿論、どんな学問分野でも教員の個性は重要。放送大学のTVでも公的な顔、科目の内容にウエイトが。ラジオ科目では傾向が大きい。講師の顔が見えない。Interviewerに入ってもらい質問をしてもらい受講生に講師の個性が伝わるように。以前のアナウンサーのさじまきこさん。個人的なことは殆ど語られなかった。
大場師がどのような経緯で。大学で臨床心理学に。その背景。自分自身に難しいものを抱えることが多い。心の病との親和性。どんどん惹かれていく。勉強の内容。臨床心理学を学び始め大学院で5年間。クライエントと付属で初めて会う。河合隼雄先生がユング心理学の資格を持ち京都大学に赴任。セラピストの教育を熱心に。心理療法やセラピストの訓練を河合隼雄先生から。京都大学で74年に臨床心理事例研究という雑誌を。京大の大学院で事例研究論文を。学外からも含め色々な専門家が事例に対しコメントを文字の形で。河合隼雄先生自身もコメントを。印象的なコメントが沢山。院生が事例を出して精神科医のコメントが。次の号で河合隼雄先生がコメントを。精神療法の立場からはこうとも見える。不味かった点もあれば良い面も。議論が続く。一つ一つの論文とコメントから多くを学ぶ。若いセラピストは継続的にスーパービジョンを。面接室の中で一定の面接の器の中で。京大の臨床心理事例研究というのは雑誌上のスーパービジョンといって良い。読者が共有する。若い大学院生が。更に指導者の人たちが。コメントに対し再コメントが。生き生きとしたものに。年1回発行する京大の臨床心理事例研究のIMPACTは絶大なものがあった。77年には同じような臨床心理面接事例を自分で発行して。編集もしながら自らの事例研究をしてコメントも出して。バイトもしてお金を。交通費を貯めて河合隼雄先生の指導も。河合先生の指導を受けることでヨーロッパのユング研究所で研修を。3年半と日本での2年間、その後は最後のスイスの2年間。ドイツやスイスの研究の柱は自分自身が分析を受ける、セラピスト候補者自身が心理療法を。教育分析。週に2時間。カウンセリングを受ける形で。大きな柱に。自分が気づいていない自分に気づく。臨床心理の世界に関心を持つ人は心のさまざまな難しさに親和性が。心理療法家としてクライエントを会うのに。逆に言えば自分の問題から偏ってクライエントを見ることにもなる。もう一つの柱はクライエントと会いスーパービジョンを受ける。個人スーパービジョン。スーパーバイザーと検討。グループスーパービジョン。それぞれが交代でケース報告をして検討をする。セラピストになろうとする人は体験を通してどういう変容のプロセスが生じるか自分の心を使い体験的に知っていくことを。しかし終わりはないプロセス。自分の心と向き合うことは生涯必要。
心理療法は空間的時間的器の中で変容が。クライエントとの関わりの中で印象に残るプロセス。ほとんど全て。宝物でもあるし苦労したことも。クライエントとの心理療法の内容は器に留めることが前提。この点については控えた方が。場合により集結してから一定の範囲で議論することはあるが、学会誌や仲間での検討の中での器の中で。不特定多数の人には控えたほうが。これも特色。
心理療法。深層心理を表すものとして夢の分析を。夢占いとどのように違う?心理療法の立場により色んな捉え方が。夢や夢の捉え方は人類歴史始まってから。旧約聖書や古代ギリシアでも夢の到来を待ったり。古事記や日本書紀。神意を知ることも語られる。古来の夢との関わりを再発見したのがフロイト。フロイト自身が科学的ということを強調していたが。00年で「夢判断」という書物。ドイツ語原題は「読む」というのがぴったり来る。行間を読んだりするが。星の運行を読む、ともドイツ語では表現する。科学的ということを大事にしたが、解釈するのではなくより深い意味を把握するという意味での。「フロイトと人間の魂」。心理療法の夢分析といわゆる夢占いとの違い。手相を読むというのと同じ単語を。実はフロイトとともに樹立したユングは中国の易に大きな関心を。因果律で捉えられることが多いが、一定のときや状況に相互に関連した事由が生じることもある。不思議な現象に出会いやすいこともユングは強調している。占うという営みと関連が無いわけでもない。夢占いが何色が出てきたからと一対一の辞書的なものなら心理療法と似ても似つかない。夢をめぐり連想や語り合いを。次回までのプロセスが。その導き手としての夢が。
セラピストとクライアント。負の感情にも向き合う。しんどいのをどのように乗り越える?大切な問い。いわゆる闇や影の世界こそ心理療法で向き合うもの。ポジティブな方に向かわずに。宇宙には陽と陰の世界があるのが自然。生の世界や死の世界。ポジティブな方に向かうのも人間。しかし逆説的だが陰の世界がなくなることもない。しっかりと受け止められないが故に症状が出ることも非常に多い。カウンセリングこそ負の感情と正面から向き合うことが大事。絶望や悲しみなどの感情は避けられるが、心理療法の器でこそ。表の世界にあるのではなくヒッソリと裏の世界にあるのが良いのでは。下水管清掃のようなものだとフロイトは表現した。負の感情や陰の世界が受け止められる過程が心理療法。いわゆる負の感情を大切に。基本的姿勢はそうだが。いわゆるセラピストの精神衛生も意識的な検討が必要。バーンアウトや燃え尽きや心身に異常をきたすことも少なくない。意識的な努力が。心理療法とは別の世界。家族や大学の問題など日常的営みもしっかりと。ドイツやスイスで6年間研修をしてしまったので、その意味では非日本的なものがある。理不尽なことや納得できないことにはとことん議論したり。意識的にすることが精神療法に良い。オンとオフをかなり明確に。夏の1ヶ月は休みを取る。年末年始に2週間と3月末以降の2週間。学校の生活のように。ヨーロッパのセラピストも。キリスト教の復活祭にも2週間休む。街のパン屋さんなども休暇を取る。そんなに休みをとっていいのかと驚かれるが、生き生きとしているのはセラピストの根本条件。クライアントも意識ができるように。セラピストへの個人的依存によらない点でも大きい。精神衛生の一つに過ぎないが。とても個人的時間を少しでも確保するように。セラピストにより音楽や映画など。日常的にはウォーキングを。週に数回1時間自然を歩く。季節を感じる。
最後の質問。学生の方にはどのようなことを大切にして学んでほしい?心理療法は大変なもので難しいもの?確かにカウンセリングはかなり安易に学べるものだと思っている人は多いが。ひとりひとりの生きた人間の心と正面から。簡単であるはずもない。人間の心や生き方や死との向き合い方など深いところを。テスト勉強がしづらい?違うものを学べる。心理療法や臨床心理学を学ぶこと。皆カウンセラーになるわけではないがそれで良い。受講生が人間や人間の心、病や障害を抱えて生きること、友人と社会。個人と宇宙など様々な大事なことについて、自分自身の生き方、どのように死んでいくのか、そういうことに取り組めることは大事なこと。今後の提供されるいろいろな科目。大学院にも。更に科目も含めて提供される色々な科目がそのような向き合い方をするきっかけになれば嬉しい。
心理療法は闇の世界ととっぷり浸かること。とても大切だが、どうしてもそう出来ない事情が。セラピスト無しで向き合うことができる世界でもあることを。

 

 

 

精神分析とユング心理学 (放送大学教材)

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