一般に法学部に入り法律学の理論を学ぶ時には、憲法民法と並んで刑法総論が最初に来ることが多い。その主な内容は犯罪一般に通じる理論である。構成要件該当性だの違法性だの責任だの共犯だのである。しかし抽象的議論をするにしても具体的行為を取り上げて説明する。大概の場合は人を殺す(故意に殺すか過失があって人が死んでしまう場合)行為で議論が展開される。「甲を殺して」とか法学部生が議論して他の学部の人間を驚かせるのはよくある話である。ちなみに刑法総論があれば刑法各論があり、詐欺罪など具体的犯罪について論じられる。但し殺人罪についてはそれほど取り扱いがない。前田雅英先生(ご存じないと思うが刑法学の権威のお一人である)は刑法議論で殺人罪については大方取り扱っているからと記述している。