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トルストイ『アンナ・カレーニナ』(ヨーロッパ文学の読み方近代篇第11回)

トルストイはもしかしたら人生そのものの方が作品より魅力的なのかもしれない。

 

沼野充義。トルストイ「アンナ・カレーニナ」。19世紀ロシア文学を。リアリズムの。規模が非常に大きいが細部への眼差しが。ロシア流リアリズム文学の頂点に。1828年生まれ。伯爵家だった。幼年時代を。「幼年時代」。「戦争と平和」を60年代に。「アンナ・カレーニナ」が次の作品。「戦争と平和」。ペテルブルグの夜会から展開。ナポレオンが席巻。ロシアにも攻めてくる。12年から。祖国戦争。アンドレーは妻を残して出兵。副官となる。アウステルリッツの戦いで負傷して啓示を受ける。一言で言うとナポレオン戦争時のロシアのリアリズム文学。ともかく長い。登場人物は600人近く。戦争を扱う歴史的部分と平和な生活を描く風俗的な。中核と成るのは貴族の社交生活。宇宙的リズムで悠々と交代。自身の歴史哲学論が大量に挿入されている。小説のお手本どころが散文小説を踏みにじっている。トルストイは形式の束縛を打ち払う。細部とマクロな。細部を。リアリズム。宇宙的流れに結びつく。読者も悠々たるリズムに入っていくことに成る。公爵は戦場に倒れて青空を。世界文学の中で最も美しいと言われる。
「アンナ・カレーニナ」。70年代。作家として力がある時期。10年前に地位を固めた。次の大作に。世界的に人気が高い。映画化も頻繁に。ヒロインが魅力的なので、誰が主役かで決まる。村上春樹の小説にも愛読者が出てくる。魅力の秘密は?アンナ・カレーニナはどんな小説か。不倫小説。美貌の人妻アンナが情熱的な不倫の愛に。プロットは有名だが。愛の悲劇。筋書きとして古典的。しかし軽薄な風俗的作品とも言えない。不倫はトルストイは初めて発見したものではない。近代小説の古典のかなりの部分が婚姻外の愛を扱う。騎士が愛を捧げる相手は既婚女性。未婚女性では小説の対象にならない。不倫小説で片付けられない。不倫だけを扱っているわけでもない。ペテルブルグの社交界の描写。農村での農作業。全てがリアルなディテールを。ロシア社会のパノラマ。社会小説。苦しい思索の跡も。思想小説。文学作品ではなく人生そのものとアーノルドが。彼の内なる目の前で起こったこと。生そのものの幻影、欧米の読者には小説の美学とは相容れない。ぶよぶよブカブカのモンスター。アンナ・カレーニナの方が小降りで把握もしやすい。不倫のstory展開がはっきりと。モンスターであることに変わりはない。かなり長い。巨大な身体の何処に突き当たるかで理解が違う。ヒロインが魅力的。アンナのことを最も魅力的とする。女優が誰に成るかは重要。グレタ・ガルボ。タイトル。ロシア語では語尾が変わる。夫はカレーニン。アメリカ式にはアンナカレーニンと?創作過程。最初から魅力的な人物として構想された訳ではない。単に罰せられるべき女性として。創作過程で精神的にも深みのある女性に。反面、夫のカレーニン。最後にはいやらしい官僚風に。不倫に走るのも無理がないと。優れた文学作品の場合、頭で作ったはずが独立した命を得たように。象徴的なのは。アンナが初めて登場する場面。駅に降り立つ時にすれ違う。なにか過剰なものが彼女の中に。作者でさえも漲っているものを抑えることが出来ないでいる。不倫については?冒頭のエピグラム。古めかしいロシア語。復讐するは我にあり。旧約聖書に突き当たる。聖書で何を意味する?常識的には不倫の恋に走り神に罰せられる。警告通り鉄道自殺に追い込まれる。トルストイは神ではない。罰したい訳ではない。どのように考える?彼女の情熱のドラマに引き込まれる。小説家の自分の仕事ではない。文学の解釈は一義的に決まるものではなく、それが面白い。ハーバード大の言語学者の学生時代の話。文学が好きでトルストイやドストエフスキーを。言語学に変わったのは、エピグラムの解釈に10通りあった。とても扱っていられないと。文学というものは解釈の可能性を残していて、一つ一つ考えるのが面白い。アンナは魅力的に情熱に生きて戦い続ける。アンナの破滅への道を共感を込めて。退屈な古典ではない。瑞々しさや面白さが。解釈の困難性も。何を言いたかったのかという愚かな批評家に、最初から最後まで書き直すしかわからないと手紙で。トルストイの長編は生をすべて飲み込む。よく高校の国語では、作者は何を言いたいか3行程度で。ナボコフ。好き嫌いの激しい審美家。トルストイをロシア最大の小説家として賛美を惜しまない。思想家として崇めていたのではないが。言葉表現こそが小説の真の機能。あくまでも文学者として。確かに言葉の美学として正確。取るに足らない細部が輝いている。非常に面白い細部の描写が。巨大な小説の中に目が行き届いている。白い腕の透けたレースがひらひら。細部を楽しみながら。冒頭の場面。全ての幸福な家庭は互いに似ている。妻は夫に不倫をされて家族と召使いを辛い目に。互いに結びついている。夫は家をあけ3日目に。料理長は出ていった。召使いも暇をいただきたいと。不幸な家庭を対比。不幸な家庭はそれぞれに不幸である。全ての。ロシア語で複数形で使うのが通常。複数形と単数形。個別の一つ一つの家庭。アンナ・カレーニナは一旦入ると抜け出せない時間の流れを持つ。長すぎるから敬遠されることはあるが、人間の生理と合わせて時間が流れている。入り込むことは贅沢な経験。ゆったり読む時間を。アンナに魅力を感じる人は多いが。家庭生活をレービンが。本当の主人公?様々な要素を全て飲み込み作品として成り立つ。読みつがれる理由。トルストイは後に芸術的快楽を認めなく成る。自分の小説の価値を否定するように。一口話。本当ではないだろうが。途中から始めた小説が止められない。誰が書いたと思ったらトルストイ作「アンナ・カレーニナ」と。芸術家と思想家の矛盾が出ている。トルストイの矛盾に満ちた生き方を。トルストイが奥深くに抱えていた矛盾が反映。読者も薄々気づく。根源的な矛盾。トルストイは一方では倫理的思想のもとに一元的に世界を統御しようとする。生の多面的な。肉の世界の多元性を知る。抑えるためにも精神を。清純な愛に基づく家庭生活を理想とするほど、破滅を避けられない愛を。生きることの生々しさを感じることが出来る。トルストイの人生は矛盾に満ちていた。トルストイの死に方は大ニュースに。82歳になり家出をして途中の駅で亡くなる。矛盾そのものを生きる。命の直接的手触りが。現在の日本に無くてはならない。

 

ヨーロッパ文学の読み方-近代篇 (放送大学教材)

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  • 作者:沼野 充義,野崎 歓
  • 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会
  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: 単行本
 

 

 

8歳から80歳までの世界文学入門

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