F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

睡眠の構造(睡眠と健康第4回その5)#放送大学講義録

脳波だけで見分けがつかないのは不思議なことだなと感じる。

 

-----講義録始め------

 

さて、話を戻しましょう。まどろんでいる時とレム睡眠の時の脳波が似ているため、これらを区別するには脳波以外のデータが必要になります。そこで、眼球運動の測定が重要になります。しかし、レム睡眠中でも目が非常に動く時期とそうでない時期があり、目の動きだけでは不十分です。

そこで、筋肉活動の測定が必要になります。筋肉活動といっても、横になっていれば筋肉はリラックスしているはずですが、体には様々な筋肉があります。例えば、手足を動かす骨格筋や、内臓の筋肉、そして私たちの姿勢を保つ働きをする抗重力筋があります。抗重力筋は、重力に対抗するという意味でこの名前がついています。

この抗重力筋は、私たちが起きている時も寝ている時も緊張し続けています。普通、骨格筋を使い続けると筋疲労を起こし、私たちも肉体疲労を感じますが、抗重力筋は疲れ知らずで、私たちの体を支え続けています。ただし、この抗重力筋もレム睡眠の時には緊張が解け、全身の筋肉がリラックスした状態になります。この時、私たちは金縛りの状態になります。

一晩あたりレム睡眠は1時間から2時間程度あり、私たちは毎晩この時間金縛りに遭っています。しかし、このことに気づくことはほとんどありません。金縛りにあったと気づくことがあるメカニズムについては第7章で詳しくお話しします。

レム睡眠中は骨格筋だけでなく、抗重力筋もリラックスします。これを確かめる方法の一つとして、猫の寝姿の観察があります。猫が前足と後ろ足を折り曲げて座る状態で寝ている時はノンレム睡眠ですが、前足、後ろ足を床に投げ出して全身の力が抜けている状態はレム睡眠です。この時、猫の目を観察すると、目が閉じていてもまぶたの裏側で動いているのがわかります。

人のレム睡眠を測定する際は、顎にある筋肉の活動を測定します。この筋肉は、口を閉じた時に中央にある筋肉です。皆さんも試してみてください。口を閉じ、顎の先に力を入れて、その部分を触ると、細かいしわのある丸い筋肉が浮かび上がります。これが顎の筋肉です。この筋肉の両端に電極を貼り付ければ、筋肉の活動を測定できます。

以上のように、レム睡眠とノンレム睡眠を区別するには、脳波、眼球運動、筋肉活動の3つを測定することが必要です。