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成人学習の未来と社会変革の予測(成人の発達と学習第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

さて、成人学習に関して、アメリカの企業研修などを専門とする研究者が、今後の社会変化を踏まえた7つの予測をしています。これらについてご紹介しましょう。

予測の第1は、インフォーマルな学習や偶発的学習への注目が高まるということです。インフォーマルな学習とは、学校や大学といった組織的な場ではなく、仕事や家庭など日常生活の中で学ぶことを指します。また、偶発的学習とは、予期せぬ経験やその結果として生じる学びを意味します。これらの学習がますます重要になっていくということです。

予測の第2は、感情や価値観、倫理、そして文化的理解がより重視されるようになるということです。学習や仕事におけるパフォーマンスを高めるため、個人の感情や価値観に配慮することが求められています。

予測の第3は、高齢の成人学習者への関心が高まるということです。人口動態の変化に伴い、高齢者の再教育や健康リテラシー向上のための学習がますます注目されています。OECDもこの点に触れ、高齢者の学習が国の経済成長維持や医療費削減に役立つとしています。

予測の第4は、多様な人材の活用、つまりダイバーシティが重視されるようになるということです。成人教育者は、異なる人種、性別、学歴、年齢、価値観を持つ人々に配慮した学習支援が求められるようになります。

予測の第5は、テクノロジーが学習に与える影響がますます大きくなるということです。人工知能やロボット技術の進展により、新しいテクノロジーを活用した多様な学習形式が普及していくと考えられます。

予測の第6は、学び方を学ぶコンピテンシー(能力)の開発に対する関心が高まるということです。学習者が自ら学習プロセスに関与し、責任を持つ力、すなわち「学び方を学ぶ」能力が求められるようになります。

予測の第7は、学習の場や環境への関心が高まるということです。企業文化においても、学習を奨励する仕組みが組織の中に組み込まれることが期待されています。

これらの7つの予測は、国際的な経済競争や社会変動が激しくなるほど、社会から個人に対する継続的学習の要請が高まることを示しています。人的資本論に基づけば、学習を通じて付加価値を高めた個人は、社会全体の資本として経済的競争力や雇用可能性を向上させます。また、学習する市民は社会変革の推進力になるとも考えられています。

学習は社会を変える力を持っていますが、同時に、個人も変える力を持っていることを忘れてはなりません。学習は自分のために行うものであり、ライフイベントや移行期などの心理的危機において、学習欲求が高まり、それが危機を乗り越えるきっかけとなることがあります。学習は前向きな行動や新たな経験をもたらし、個人の人生において中心的な役割を果たします。

この点については、第2回以降の講義でさらに詳しくお話ししたいと思います。いずれにせよ、学習は社会や個人にとって変革の原動力となるものです。