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多職種協働チームアプローチを精神科医療に適用。外来治療、入院治療の事例を掲載し、家族との関わりやケースカンファレンスも解説。(保健医療心理学特論第3回)♯放送大学講義録

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今回の内容は、保険医療領域だけでなく、心理職が携わるすべての領域で必要とされる多職種協働チームアプローチについて取り上げます。講義の内容として、精神科医療領域に焦点を当てます。

精神科医療は外来治療と入院治療に大きく分けられます。まずは外来治療における多職種協働チームアプローチについて、地域のクリニックと病院のデイケアの実践例を紹介します。次に、入院治療における実践に焦点を当てます。

また、治療プロセスにおける家族との関わりも重要な要素として考慮します。最後に、ケースカンファレンスを例に、多職種協働およびチームアプローチの具体的な実践形式について考察します。

具体的な内容に入る前に、多職種協働及びチームアプローチについて概説します。こちらは印刷教材に掲載した図を用いて、協働、連携、チームという用語について説明します。援助者a、b、c、dがいる状況で、これら多様な援助者や職種が横の繋がり(この図で言うと横の矢印)を通じて連絡調整を行います。そして、援助者だけでなく本人や家族などの非援助者も交えて、共通の目的のために計画や作業を行うことを「協働」と捉えます。また、チームについては、各援助者や職種の職務内容とその協働作業全体を指すものとして説明します。

 

 

 

古事記と日本書紀の成立過程、神武天皇や太安万侶の役割、国学における研究の重要性を解説。古代日本の歴史文献としての価値を詳述。(文学・芸術・武道にみる日本文化第3回)#放送大学講義録

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古事記は元明天皇の命で712年に成立しました。これは太安万侶が記録したものです。上巻は神世の巻で、天地創造から始まり、天孫降臨し神武天皇が誕生するまでを描いています。中巻は初代の神武天皇の治世から始まり、日本各地の征伐と朝鮮半島への影響を及ぼす景行天皇までを記述しています。ヤマトタケルなどの英雄的な人物が活躍します。下巻は16代の仁徳天皇から33代の推古天皇までを扱います。古事記は日本の神話や伝承を集大成した作品として、その物語性が強いです。

これに対して8年後の720年に完成した日本書紀は、舎人親王を中心に大伴家持も含む役人たちにより編纂されました。日本書紀は、対外的な意識を持って正式な漢文表現を用い、基本的には古事記と共通する史料に基づいてほぼ同じ内容を叙述していますが、印象はかなり異なるところもあります。日本書紀は日本の歴史の最初として重視され、読み継がれています。以降、奈良時代から平安初期にかけての日本三大実録まで編年式で連続する国史が編成されました。日本書紀については、平安時代以降も注釈書や関連文献が数多く作られています。これに対して古事記は伝承の範囲が限られており、難解な漢文であったため、平安初期にはすでにその解読が難しくなっており、江戸時代に国学で研究されるまでほとんど本格的には読まれていませんでした。18世紀後期には、本居宣長が33年もかけて原文の訓読と注釈を行いました。これ以降、古事記は日本の古代の精神を知る上で非常に重要な文献として扱われるようになりました。

 

 

 

発達研究の目的は実態把握と効果的介入にあり、エリクソンの理論を参考に、人生全体の発達的変化を詳細に捉える方法を探求します。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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最後に、何を目的とするかですが、こうしたデータを得ることで発達の実態をきちんと把握しようとする実態把握研究は非常に重要です。一定の知見を得られれば、それを手がかりにして大きな問題になる前に介入できますし、実施した介入が実際に意味のあるものだったかを検討する効果研究もあります。最終的には、適切な介入につなげるために何をすべきかに関する情報を得ることがとても重要ですが、現段階ではまだ明確な結論に至っていません。

その意味で、地道ではありますが実態把握をきちんと積み重ねていくことが重要だと考えます。今日は「発達とは何か」というテーマで、発達をどのように捉えていくかについて話しました。

人の発達とは、必ずしも何か良いプラスの状態を重ねていくだけではなく、プラスのものがあれば、それに伴う喪失というマイナスの部分もあり、その両方を合わせ持ちながら進んでいくものです。さらに、人の発達を捉える際には、生まれてから死ぬまでの生涯にわたる発達的な変化という視点を持つことが大切です。同じような事柄であっても、短いスパンで考えているときと、長いスパンで考えた場合には全く異なる意味を持つこともあります。そのため、生涯を通じた視点を持つことが非常に重要です。これに関連して、フロイトやピアジェ、そして生涯にわたる人の発達を捉えたエリクソンの理論を紹介しました。

エリクソンの理論は、人が生涯にわたってどのように変化していくかという全体的な変化を捉える点で参考になります。また、発達研究の方法についても整理しました。発達的なデータを得ることは、単に子供たちの現状を知るだけではなく、人が発達していくプロセスにおいて何が重要か、どのようなことが必要かを探る上で重要です。この点から、発達の時期を時間軸に沿って捉え、各発達領域を詳細に分析することの重要性を強調しました。

 

 

 

発達研究の基本的なアプローチを、日誌研究、横断研究、縦断研究、コホート研究など、データ収集と分析方法を通じて詳細に解説。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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人の発達を捉える研究方法についてお話しします。発達研究の方法は多岐にわたりますが、基本的なアプローチの一つとして日誌研究があります。この方法では、個人の行動や心の営みを詳細に観察し、記録に残します。例えば、チャールズ・ダーウィンは1877年に「マインド」という哲学雑誌に自分の長男ウィリアムの観察日誌を発表しました。この日誌には視覚、感情、思考、道徳感、無意識などに関する詳細な記録が含まれており、後の児童研究に大きな影響を与えました。

研究方法を考える際に重要なのは、データの取得方法、分析方法、研究対象、研究の目的をどのように定めるかです。データの取得方法としては、ダーウィンのような観察法の他に、条件をコントロールした実験法、紙と鉛筆を用いた面接法、そして調査法があります。特に面接法では、質問の内容や順序を相手の状況や回答に応じて柔軟に変更する半構造化面接があります。

データの種類によっては、量的研究や質的研究、またはこれらを組み合わせた混合研究を行います。研究対象としては、横断研究と縦断研究があります。横断研究は一定の時点で異なる年齢層を対象に調査を行い、縦断研究は同じ対象者を時間を追って観察します。また、コホート研究は特定の集団に焦点を当て、長期間にわたってその集団の環境との相互作用を調査します。

これらの研究方法を通じて、例えば疫学研究ではある地域で生まれた赤ちゃんのアレルギー発症について長期間にわたりデータを収集し、アレルギーの発症要因やその影響を分析することができます。これにより、地域ごとの発症率や影響する要因、症状の悪化要因を理解する手助けとなります。

 

 

 

エリクソンの発達理論を解説: 幼児期から老年期までの心理社会的発達段階とその特徴、アイデンティティと自己実現の探求に焦点を当てた分析。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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幼児期初期は自立性確立ということで、自分でいろんなことをやってみたいと主張する一方で、うまくできずに失敗してしまうこともあります。失敗したことが恥ずかしいと感じることや、自分はできないかもしれないという自己疑念が生じることがあります。幼児期の後半は「罪悪感」という時期で、なぜならどうしてといった質問を盛んにすることからも知られています。この時期は、積極的に世界に関わろうとする一方で、何か悪いことをしてしまったかもしれないという罪悪感が芽生えることがあり、その両極の中で揺れ動きます。学童期は「勤勉性対劣等感」として知られ、学校で新しい知識を獲得し、一生懸命努力しますが、できないことが明らかになると、それが劣等感につながることがあります。

エリクソンが特に重視したのはこの青年期です。青年期は、「アイデンティティ対アイデンティティの混乱」として記述されますが、アイデンティティとは自分が何者なのか、という自己の理解です。青年期は、自分が何者なのかを考える時期でありながら、何者であるかが分からなくなったり、何をすべきかがわからなくなることがあります。この時期、過去にやり残した課題をクリアし、未来の課題に取り組むこともあります。

成人期では、自分が何者であるかを確立した人は、真の意味で他人との深い関係を築くことができます。それは、人生のパートナーや長年の友人との親密な関係を含みます。しかし、自分と全く同じ人間はいないため、孤独感を強く感じることもあります。成人期は「生殖性対停滞」としても知られており、これは親としてだけでなく、教師や人生の先輩として、後進を育てる役割も含む広い概念です。適切に引き継げないとき、人生が停滞しているように感じることがあります。

老年期では、人生の最終段階を迎え、残された時間が少なくなる中で、人生が失敗だったかもしれないと感じることがあります。しかし、個人の生涯が終わるとしても、その人生が家族や人類に何らかの意味を与えると考えると、統合感につながります。これら全てを通じて、エリクソンは人生全般にわたる発達理論を構築しました。エリクソンだけでなく、フロイトやピアジェの理論も踏まえつつ、人の発達を理解することができます。

 

 

 

フロイトとピアジェの発達理論に加え、エリクソンの心理社会的発達理論が大人の生涯発達を8段階で詳述し、個人成長のダイナミクスを解説しています。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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フロイトもピアジェも、発達のそれぞれの時期に特徴的な状態があることを想定しており、それを「発達段階」と呼んでいます。ただし、フロイトであれピアジェであれ、それらの段階が大人になるという状態で、一つの最終的な状態として捉えられており、大人が一つのゴールとされています。しかし、人の発達は大人になることで完了するわけではありません。

成人以降の発達がどのようなものかを考える必要があります。成人期以降の発達も含め、それぞれの時期の発達課題を考えた人としてハヴィガーストがいます。ハヴィガーストの発達課題論は、1930年頃のアメリカでの理想的な市民の姿を想定したもので、人の発達を全体的に捉える、または人の発達として共通するものを捉えるというものではないという点で異なります。

このように考えると、人の生涯にわたる発達を考えたのがエリクソンです。エリクソンは、人の心理社会的発達に関する理論として知られています。エリクソンは、フロイトの性的発達段階論を基にしながらも、人が経験するさまざまな人間関係や社会との関わりを中心に、人の生涯を8つの段階に分けて、それぞれの発達時期に2つの状態があると考え、その理論を構築しました。

これらの8つの段階は乳児期に始まり、老年期までを含みます。フロイトやピアジェが完成段階と見なしていた青年期以降の発達も考慮されています。エリクソンの理論では、それぞれの時期に特有の2つの極端な状態が存在し、その中で葛藤を経験し、そうして人の発達が進むとされています。たとえば、乳児期の課題としては、基本的信頼と基本的不信があり、人に対する基本的な信頼感を築いていく時期と考えられます。

乳児期に、例えば身近なお母さんが、自分に対して不適切なことをすることなく、自分に求めているものに応じてくれることから、人を信じる力を獲得していきます。ただし、人を信じるとは、単に無条件で信じるということではなく、時には裏切られることもあります。お腹が空いてミルクを飲みたくて泣いているのに、時々お母さんが応じてくれないこともあります。それでも基本的には信じてよいと理解する中で、人に対する基本的な信頼が形成されていきます。

 

 

 

ピアジェの発達段階理論を掘り下げ、感覚運動期から形式的操作期までの子供の認知発達プロセスを解説。認知心理学の基本を紹介。(発達心理学特論第1回)♯放送大学講義録

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もう1人の発達理論家として代表的なのがジャン・ピアジェです。

ピアジェはスイスのニューシャテルで生まれ、ジュネーブのルソー研究所で子供の知能あるいは思考の発達について研究をしてきました。ピアジェは、人が環境との関わりから知識を構築し、既に持っている認知構造の中に新しい情報を同化、取り入れることで理解を深めていくと考えました。これを発生的認識論と呼んでいます。認知発達に関するピアジェの理論は、段階論として知られており、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期という4つの段階で考えられています。これらの段階は、人の認識世界が具体的なものから抽象的なものへと移行していく過程を示しています。

感覚運動期は、生まれてから最初の2年間を指します。ピアジェには3人の子供がおり、ジャクリーヌ、ルシエン、ローランの観察から「知能の誕生」という本を書きました。子供たちに様々な実験をしてみて、その反応を見て、これを本にまとめました。乳児期の子供は、見たり、聞いたり、触ったりする感覚や、掴んだり、落としたり、叩いたり、噛んだりする運動を通じて外の世界を知ります。

ピアジェは、外的な活動を通じて外の世界を知る時期が感覚運動期であると考えました。この期間中、子供は頭の中に物を思い浮かべることができず、例えば物が隠された場合、それが存在しないかのように振る舞います。しかし、物との関係を繰り返し経験することで、物の恒常性を理解するようになります。つまり、見えない時もその物が存在していることを学びます。

そして、見えないものの存在を心の中で思い描くことができるようになるのは、イメージや表象が形成されるためです。この能力が成立すると、次の段階である前操作期へと繋がります。前操作期は幼児期であり、この時期には心の中で外界の事象を処理する活動、つまり思考が発展します。子供は遅れ模倣や象徴遊びを通じて、目の前にないものでも心の中に再現できるようになります。

前操作期には言語が発達し、リンゴと言われた時にその物体が見えなくても、リンゴを思い浮かべることができます。この時期は、見かけに惑わされやすく、他人の視点を理解することが難しいため、自己中心的な考え方が支配的です。

次に、6歳から11歳の具体的操作期では、子供は具体的に理解できるものに対して論理的に考えることができるようになります。この時期には物の保存概念が成立し、形が変わってもその本質が変わらないことを理解します。この理解に基づき、異なる形の容器に同じ量の液体があっても、その量が変わっていないと理解することができます。

そして、形式的操作期では、具体的な現実から離れて抽象的に考え、仮説を立てて推論することができるようになります。この段階で、子供たちは多様な視点から物事を考える能力を獲得し、自己中心性から脱却します。