-----講義録始め-----
「ここで今回のゲストをご紹介します。牧阿佐美先生です。牧先生は、日本のバレエの創成期にバレエを始められ、戦後の1954年(昭和29年)にアメリカに留学されバレエ教育を受け、帰国後の1956年(昭和31年)に牧阿佐美バレエ団を創立されました。このバレエ団は2016年に60周年を迎え、現代日本のバレエ界を代表する大きなバレエ団の一つです。 また、牧先生は1999年から2010年まで新国立劇場のバレエ団の芸術監督も務められました。 今日はよろしくお願いします。
先生がバレエを習い始めた頃は戦中でしたが、当時の日本は現代とは随分違っていたと思います。バレエはそんなに一般的ではなかったでしょうか。」
「知らないと思います。今では4000以上のスタジオがありますが、その頃はバレエと言うと、バレーボールと混同されることもありました。」
「戦後、アメリカに留学された時はどのような感じでしたか?」
「最初はホームシックで、毎日1時間ごとに何かを考えなければならない状態で、何もわからない中で一生懸命に取り組みました。1年経っても、当時の日本とは全く違う環境でした。」
「そうですか。日本で学んだことと、アメリカで始めたバレエとの間にはギャップがあったのですね。」
「はい、基本的な基礎は同じでしたが、アメリカでは多くの種類のテクニックを学びました。基本は同じでしたが、テクニックの種類は日本よりずっと多かったです。
日本のバレエスタジオもしっかりしていましたが、テクニックの種類が少ないため、舞台での表現が限られていました。ですから、帰国してから私が習ったことをみんなに見せると、新しいスタイルと言われることが多かったです。」