------講義録始め------
「文化芸術というのは、決してお金儲けの対象ではなく、多額の資金が投じられるものですが、これを完全に国に依存するのは難しいですね。しかし、文化芸術は本当に育てるべきものだと思います。特に絵画は一度描かれると残りますが、バレエは一時的で消えてしまいます。だから、観客の記憶に残るように育てるしかありません。バレエは、踊る人の心や芸術性も観客の記憶に残りますが、その後は消えてしまう、とても贅沢な芸術です。」
「バレエは芸術の一ジャンルで、その魅力はどこにあるのでしょうか。」
「作品にもありますが、特にセリフがなく、全ての意味を身体で表現する点です。そのため、体は美しく整えなければなりません。例えば、歌にはソプラノやアルトがありますが、踊り手もその人の雰囲気でソプラノに似ている人もいます。カルメンなど特定の役はそのタイプが上手く踊ります。ドン・キホーテや眠れる森の美女も真っ白な感じがします。
日本では踊れる人が少ないので、一人のダンサーが多くの役を演じることが多いですが、本来は異なる個性を持つ多くのスターがいて、それぞれが踊るべきです。セリフがないため、振付師は、ダンサーを作品に合わせて選びます。技術が高くても、その作品に合わない雰囲気のダンサーは、その作品の感じを出せません。
バレエは世界共通の芸術であり、今や日本の代表的な芸術となり、輸入芸術から日本の芸術へと変わりつつあります。全ての国の人が同じスタートラインから見ることができ、言葉がないため、どこへ行っても同じ条件で鑑賞されます。それによって観る人の解釈で感動が生まれるのです。」