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生徒指導と教育相談第1回(その3)#放送大学講義録

教師のリーダーシップは必要なのだろうか。

 

-----講義録始め-----

 

次に、教師と生徒の関係や生徒指導について述べます。教師のリーダーシップや指導態度は学習集団の構造や学生の集団雰囲気に大きく影響を及ぼします。これが児童や生徒の学習態度や集団行動にどのように作用するかについて考察します。

まず、教師のリーダーシップに焦点を当ててみましょう。どんな集団でも、2つの基本的な機能を持っています。一つは集団の目標を達成する機能、もう一つは集団のメンバー間の連帯感を高め、集団の維持を図る機能です。どちらの機能も欠けてしまうと、集団は存続しにくくなります。集団のリーダーは、これらの機能のどちらか、または両方を果たす主要なメンバーと言えます。

目標達成の機能は、リーダーが目標に向かって計画を立て、その計画に基づき集団のメンバーを導く働きを指します。具体的には、メンバーに指示や命令を出して活動を促進させるリーダーの役割です。これを「パフォーマンス機能」または簡潔に「p機能」と呼びます。このようなリーダーの行動を「リーダーシップのp行動」と称します。

一方、集団維持の機能は、目標達成の過程でメンバーが感じる緊張や疲労を軽減し、穏やかな雰囲気を作り、集団の結束を強化するリーダーの役割を示します。これを「メインテナンス機能」または「m機能」と称します。このリーダーの行動スタイルを「リーダーシップのm行動」と言います。

教師のリーダーシップ行動の研究において、代表的な研究として社会心理学者の三隅二不二教授のPM理論が挙げられます。この理論における「P行動」とは、児童生徒を学習目標に向かわせる指導や、学級集団の規範に従わせる指導、そして同級生同士の友好的な関係を促す指導を指します。具体的には、宿題の徹底や決まりの順守、学級の和を保つような行動です。

一方、M行動は、リラックスした雰囲気の中で学級集団を統率する行動で、子供との良好なコミュニケーションや緊張緩和を目的とした行動です。教師が子供と共に遊んだり、共感的に話を聞くことなどが該当します。

PM理論では、教師のP行動とM行動のバランスに基づき、リーダーシップ行動を4つのタイプに分類しています。これらのタイプは以下の通りです:

  1. ラージP、M型: P行動とM行動の両方が高い。目標指示と集団の統率の両方が得意なリーダータイプ。
  2. ラージP、スモールM型(略してP型): 目標指示は得意だが、集団の統率が弱いリーダータイプ。
  3. スモールP、ラージM型(略してM型): 目標指示は弱いが、集団の統率は得意なリーダータイプ。
  4. スモールP、スモールM型: どちらも弱いリーダータイプ。

三教授の研究グループは、これらのリーダーシップタイプと学校モラール(学校や学級集団に対する児童生徒の満足度や積極的態度など)との関連を分析しています。結果として、ラージPM型の教師の下での学級は連帯意識が高く、学校に対する不満が低いこと、そして学習意欲や規律的行動が高いことが示されました。

これらの結果を基に、教師のリーダーシップ行動としては、P行動とM行動のバランスが取れているラージPM型が最も望ましいとされています。しかし、教師が自己評価するリーダーシップタイプと、児童生徒が評価するタイプは必ずしも一致しないことも指摘されており、教師は自分の行動が児童生徒にどのように perceived されているかを常に意識する必要があると結論されています。