まあ治安悪化を感じてもらえると警備業界は潤う。
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ここからは、人々の主観的な認識の側面について考察します。犯罪に対する一般の人々の認識は、犯罪研究において「犯罪不安」と「犯罪リスク認知」という二つのカテゴリに大別されています。犯罪不安は、犯罪被害に対する恐れや心配、懸念などの感情的側面を指し、一方、犯罪リスク認知は、被害に巻き込まれる確率や被害の程度の主観的な見積もり、つまり認知的側面として捉えられます。これらは、いずれも犯罪に対する人間の反応として捉えられており、犯罪不安と犯罪リスク認知の間には相関があるとされています。
具体的には、犯罪不安は、日常生活で犯罪被害に遭う心配の程度と、被害に遭う可能性や、実際に被害を受けた時の被害の大きさ、つまり主観的確率と主観的強度を掛け合わせることで説明されます。また、犯罪不安に関連する要素として、自分の対処能力の自己評価も考慮されています。これは、自分自身で犯罪をどれほど回避できるか、また、その被害をどれくらい小さくできるかという、犯罪に対する制御可能性についての認識を指します。
さて、実際の生活者の犯罪に対する認識を見てみると、内閣府が2012年7月に実施した治安に関する特別世論調査によると、調査対象は全国20歳以上の日本国籍を有する3000人で、有効回収数は1956人でした。この中に「現在の日本が治安が良く、安全で、安心して暮らせる国だと思いますか」という質問があり、約4割が否定的、約6割が肯定的な回答をしました。2006年の同じ調査では、否定的な回答がおよそ5割であり、2012年には治安に対する不安が幾分緩和された可能性があります。しかしながら、約4割の人々が日本の治安を良くないと感じている点は注意すべきである。
また、2012年の治安に関する特別世論調査には「ここ10年間で日本の治安は良くなったと思いますか、それとも悪くなったと思いますか」という質問もあり、8割以上の人々が治安が悪くなったと感じていることが示されました。2006年の調査結果と比較して、この数値はほとんど変わっていません。私が2012年に実施した調査でも、生活者の犯罪不安が高いことや、犯罪の起こりやすさや程度に関する高い認知が示されました。
一方、犯罪に対する制御可能性の認知は低いとの結果も得られました。そして、犯罪に巻き込まれることに対する不安の程度や、自分が犯罪被害を受ける可能性との間には、それぞれの相関が認められました。
最後に、上述の2012年の調査で、ここ10年間の治安の変化を問う質問について、その10年前は2002年との比較ということになります。