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認知症終末期の支援では、意思決定支援と家族主義の重要性を強調。心理職の役割と家族の話を整理する支援の意義を解説し、認知症診療での経験を紹介します。(保健医療心理学特論第8回)♯放送大学講義録

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認知症の終末期の支援や、ご本人、ご家族向けの支援について、先生からのアドバイスや心理職を含む支援者へのメッセージがあればお伺いしたいです。

「意思決定について言えば、日本の社会全体が家族主義、相互依存主義と言われることもあり、個人と家族の境界が非常に曖昧だと思います。そのため、代理で決めなければならない人たちの負担感も大きくなることが多いと思います。「あなたに決めてほしいのではなくて、お父様が今ここで一緒に話し合いに参加できたら、どう言っただろうかと想像しますか。私が想像することと、ご家族様が想像されることが違うのか、似ているのかを知りたいんです。」というと、比較的スムーズに答えが返ってくることがあります。家族が話し合っていなくても、お父様の考えがわかると信じている場合、それは良い悪いではなく、その家族のあり方だと思います。ただ、誰の意見なのか、誰の思いなのかを整理する役割の人がいると良いと思います。そういったところに心理職が関わる可能性は考えられるのではないでしょうか。」

専門家の話を聞いて、意思決定の主体は本人であること、そして意思決定に揺れる家族の話を整理する支援を心理士が役割として担う意義を改めて認識しました。

最後に、長年認知症診療に携わってきた専門家に、認知症診療で大切にしてきたことと、心理士に向けたメッセージをいただきました。

「私が診察室で大事にしていることは、認知症の場合、認知症とともに生きるとはどういうことなのかを教えてもらおうとすることです。認知症と共に生きることを知っているのは、認知症の本人だけです。その人から話を聞けることは、とても貴重な機会なので、そのことを知りたいと思っています。いろんなステージの認知症の方がいますが、その一人ひとりから体験を聞きながら、こういうことなのかなと学ばせていただくことが重要だと思っています。」