-----講義録始め------
初期支援には比較的多くの心理士が関わっていることが多いと思いますが、中期から重度にかけての心理職の関わりはまだ浸透していません。認知症看護の立場から、心理士にどう関わってほしいかについてメッセージをいただけるとありがたいです。
「認知機能は体の影響を非常に受けやすいと思います。これは認知症の方に限ったことではなく、認知症でなくても具合が悪かったり、疲れたりすると注意がうまく向けられないことがあると思います。ですから、どんな体の症状でつらそうなのかをきちんと探る必要があります。実際に一緒に見ていただいて、食事の場面ややり取りを観察し、例えばせん妄によって注意障害があるのか、元々の認知症による認知機能障害なのかを見極めることが大事です。そういったヒントをいただけることで、直接的なケアの方法が見つかり、非常に助かります。」
周囲が困る本人の言動をBPSDと決めつけずに、本人の立場で想像する深い理解に基づいたケアが重要です。心理士は、認知機能や身体的要因、心理的要因、環境要因など多角的に見立てることが求められます。
後期になると、歩行や嚥下機能の低下、言語による意思疎通が徐々に困難になり、広く日常生活動作(BADL)に介助を要するようになります。この段階では、検討や皮膚トラブルの予防、食形態の工夫、理解力に配慮した意思疎通の工夫が必要です。心理検査では、注意集中や簡単な質問に答えられないことが本人の負担となるため、検査法で得られるメリット、デメリットを勘案し、観察法や面接法中心のアセスメントが求められます。