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個別性の中から普遍性を見つける -事例研究法-(心理学研究法第12回)

統計的分析が苦手だという人間は大学の友人に多かったような気がするのは法学部在学の歪み?事例研究の方がよほど熟練を要するのだろう。

 

渡辺直登。個別性から普遍性を見つける。事例研究法。事例研究とは?とても重要な出来事について掘り下げて調べる?1つのまたは数個の事例を分析する。事例研究法はそれに留まらない。知見を他の事例への適用を目的として一般化する。事例の分析には留まらず事例の背後の普遍的背景などを。日頃読んでいる雑誌の評論と異なり、一般的な理論を。科学的探究。Case Study。事実や症例、証拠などが。事例研究は心理学に限らない。症例研究や判例研究があり重要な研究法になっている、経営学や社会学なども。ケース・メソッド。参加型の。
事例研究法は一つ一つの事例の個別性を重視。統計学的Approachとは大きく異る。真髄は事実をあるがままに正確に記述すること。変数を統制する心理学的実験とは違い、幾何学的と。どうして事例研究は幾何学的と?理想的な研究は。マックス。変数の分散を最大化。変数の誤差分散を最小に。外的な変数を統制する。焦点となる変数の正味の強さが明らかになり、関係性をクリアーにできる。複雑で繊細な心理を明らかに。変数は多岐に及ぶ。予め定められていないことが多い。丁寧に記述し分析する時間コストや負担で事例は少数に。事例は生じた通りのありのままに記述分析。外的変数の統制も困難。広く普及する科学的方法論とは原則が異なる。幾何学的との批判を。
事例研究法は劣勢を否めない。幾何学性批判から擁護を。研究パラダイムに立ち戻り。社会科学の方法論。論理実証主義と解釈主義。論理実証主義が依拠する。森羅万象は法則に従っている。帰納法と演繹法で明らかにできる。現象を貫く法則性の発見に。解釈主義。1回限り。自然科学のような法則性を見出すのは不可能。言語を用いて質的に解釈することに。心理学の領域では2つのパラダイムに。法則定立的と個別記述的。実験や観察などの方法を駆使して法則を。一方応用心理学の領域では個々の事象の個別性を。事例研究法は軸足を解釈主義的に。事例研究法は論理実証主義から見れば科学性に乏しい。しかし研究の過程で見失うような質的洞察を行うことができる。理論的一般化をすることを怠らなければ豊かな可能性がある。
事例研究法はその事例が生じた社会的文脈を大事にする。社会的文脈の中で生きている。母親父親の関係。学校での人間関係。異性との交流関係や課外学習での。成人になると職場における関係や家庭における子供などとの関係や経済的情勢など様々。事例研究は文脈内存在となる個人と。どれほど広げるかが鍵。ブレナー。ミクロメゾマクロの社会生態系。社会的文脈の中で。それぞれの社会生態系は包摂される関係。より大きな小さな生態系を含む入れ子状の。人間の心理や行動を一般化するに当たりどのレベルの社会生態系で発生しているかの意識を。個人の心理や行動の解釈。社会的文脈を。
事例研究の進め方。個人の置かれた視座。単一のレベルだけでなく入れ子状の。より分厚い記述が可能になる。典型的進め方。事前準備。事例の選定、研究目的の明確化、リサーチクエスチョンの。長期間関わるものが。合致する事例を探し出し利害関係者の了解を得ることはプライバシーなどを考えると難しい。記述分析すると普遍的なものが見えてきそうなものを。何故その事例を取り上げるのか、という正当性、何を明らかにするかの目的性を明確に。文献レビューを。考えの深化や関連性の吟味。知識のフロンティアの確認が。事例を研究することが知識を前進させる正当性が確保。リサーチクエスチョン。ブレークダウンさせる。航海に例えれば海図と航海計画。策定することで事例研究が当てども無く彷徨うのを防げる。記述は冗長になりがちなので、いくつかのリサーチクエスチョンがあればよき道案内に成る。事例の記述が終わり分析の段階での視点にも成る。
情報の収集。個々のリサーチクエスチョンに応えるためにどんな情報が?面接と面接記録。事例の当事者に直接面談してきめ細かく記述。同時者の同意があれば関係者との面接も。心理テストと診断検査。標準化されたものと。参与観察。研究者が関与しながら多面的長期的な。観察テスト。エスノグラフィーを用いる時のフィールドワークと同義。二次的ドキュメント。過去の状態や現在を示す指標。記事録白書メモ統計データなど。大事なのは社会生態系的視座で。事例研究の目的はユニークな社会の文脈で生きる個人から一般法則を。集めるべき情報は単に個人の内的なものではなく社会的文脈に関する情報も含めて。想像以上に生態系の影響を受けているもの。
事例の記述。事例を生き生きと記述。読者が読んで面白い。しかし小説のようにstoryの創作は避ける。事実を忠実に、証拠には質的量的なもの。検索結果など材料は多様。証拠の保存状況も様々、整理しておくと記述の助けに。グラウンデッド・セオリーなど。時間軸に沿って整理して社会的文脈と合せて記述することも。
事例の分析と理論的一般化。完成した事例を分析。リサーチクエスチョンの一つ一つを吟味しながら、妥当性と信頼性を高める。記述に含まれる複数の証拠を絡ませる。支持する証拠は複数あったほうが良い、複数のリソースがあるなら妥当性や信頼性も増す、答えを出し終わったら一般化を。既存理論。リサーチクエスチョンの答えの整合性を吟味。先達たちの結果と合致しているか。合致しているなら理論は普遍性を持つ。合致しないなら。1つの理論でなく別の理論を当てはめた場合の、他の理論を援用すれば、既存理論そのものの修正を、よほどでないと説得力を欠く。事例の積み重ねが必要。事例は特殊なものと。理論に合わずに捨て去るのではなく火種として残す。公に発表することが大切。
心理学の研究で事例研究がどのように使われているか。心理学は幅広い。人間に関することは全て。事例研究法はよく用いられてきた。新しい理論のヒントに。体系的な研究法としては100年前の20世紀初頭。社会科学の研究手法が洗練されていなかったので、様々な分野で事例研究が。今日においても重要な定性的研究手法として。科学的厳密性の観点から言えば統計学的手法などの定量的研究と比べて劣勢。しかし比較可能性がある研究は実験の結果とみなせると。臨床心理学などの応用心理学の分野で、これらの分野ごとに。臨床心理学の分野、治療場面の会話の過程を分析する事例研究。臨床面接法が主。セラピストが分析を、相談事はユニーク。そこで事例ごとに既存理論を参照して検討や分析、治療効果の評価を。積み重ねで新しい理論を。フロイトの力動論。神経症の治癒過程の理論も事例研究から。カウンセリング心理学。臨床心理学より人間の健康的側面に着目して発達促進を。クライエントとの会話を分析、個人の内面の深い記述でなく。自らが調整するのを支援する。クライエントの抱える問題の社会的背景を。キャリアカウンセリング。社員のキャリア発達論。社会的文脈と絡めて。生涯発達心理学。人間の全てのライフスパンを視野に入れて個人の発達を。人間は年齢を重ねるほど多様で複雑な社会関係を持つ。様々な文脈の影響を。発達の諸相は個別性を増す。事例研究はより広範な社会的文脈、社会的生態系の記述や個人の。レビンソンの理論。回顧的面接から。産業組織心理学。人々の心理や行動を分析してより良い産業組織を。マネジメントそのものを扱うものなど範囲は広い。事例研究であっても人間は必ず登場する。知識の追求や理論構築に終わるのではなく、人的資源管理に役立つことが求められる。アクションリサーチなどの。キューバミサイル危機。アメリカ政府の意思決定に集団浅慮傾向があるとした。コミュニティ心理学。学校地域から国際関係に至るまでの社会的文脈を。原因となっている社会システムを定性的に。コミュニティ感覚など。受け身ではなく能動的な人間。コミュニティ状況を改善することで健康な生き方を。コミュニティ心理学におけるのは研究者自らが身を投じることが多い。当該コミュニティにコンサルテーションやアクションリサーチをすることも多い。
個別性の中から普遍性を。事例研究法は幅広い知識や経験やスキル、フットワークの軽さや粘り強さが必要。

 

心理学研究法 (放送大学教材)

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