法的な側面だけではパワハラは語れないと思う。
-----講義録始め-----
以下は「パワハラの法的問題」という題名の講義の書き起こしを整理した文章です。
パワハラの法的問題と現状
パワハラ(パワーハラスメント)は、上司の立場を利用して強制的な側面を持つ問題である。この問題は、24年3月に厚労省の円卓会議で取り上げられ、以下のような具体的な事例が挙げられた。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切りはずし
- 過大な要求
- 過小な要求
- 私的領域の侵害
企業の70%以上が相談窓口を設置しているが、99人以下の企業では40%未満である。メンタルヘルス不調に次いで多く、上司から部下へ、先輩から後輩へ、正規社員から非正規へのケースがある。上司と部下のコミュニケーションが少ない場合に多く、80%以上の企業が経営上の課題として重要と認識している。
人格権侵害行為と使用者責任
パワハラは人格権侵害行為として捉えられることが多く、業務命令や人間関係紛争に発展することもある。会社の責任も追及されることがあり、以下のような行為が問題となる。
- 暴行
- 抑圧的な職場環境
- 揶揄
- 同僚によるイジメ
- 解雇の是非
- 私生活への干渉
- 孤立化
- 吊し上げ
- 職場いじめ
- 配転命令
- いじめ的な業務命令
通常の業務上の発言はパワハラにならないが、諸般の事情が勘案される必要がある。
教育指導との関連
教育指導とパワハラの境界は曖昧で、OJT(職務遂行をしながらの教育指導)などでは注意が必要である。上司の指摘に対し過剰な反発がある場合、適切な教育が必要で、そうでないと解雇権の濫用になる可能性がある。新入社員や派遣労働者には一定の配慮が必要で、一定の強制が必要な教育指導の場合が問題となることもある。
ハラスメント法理の問題点
ハラスメント法理には以下のような問題点がある。
- 労働者人格権の保護
- 様々なハラスメントの対応
- 不法行為構成だけでなく、債務不履行的構成の考慮
- 会社に職場環境の整備の責任
- 判例法理の問題点や限界
- 主観的側面の否定が困難
- 労働者サイドの主観に因る問題
- 合理的客観的基準の確立
- 相談機能の不足
- 同僚の役割の低下
- 紛争が外部に持ち出される傾向
- 権利義務だけでは解決されない問題
- 職場の規律の過小評価
- 上司の権力の温存
- 仕事の能力の習得には適正な指導が必要
- 一定の上下関係の必要性
これらの問題点は、パワハラ対策の複雑さと深刻さを示しており、法的な側面だけでなく、経営、人事、教育など多岐にわたる対応が求められる。