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子ども心理といじめ防止法の真実(司法・犯罪心理学第4回その10)#放送大学講義録

法律だけでは処理が出来ても解決はできないのだろう。

 

------講義録始め-------

 

それでは、いじめの防止や早期発見のためのいじめ防止法が効果を発揮したのかどうか、現代型いじめの特徴を踏まえて検討してみたいと思います。
警察庁の調査によれば、いじめに絡む事件で学校等が警察に通報し、暴行や傷害などで摘発、補導された小中高校生は、2016年に267人で、2015年は331人、2014年は456人でした。
2014年から2016年にかけて減少しています。
一方、文部科学省の調査によると、学校が認知したいじめ件数は、2016年はおよそ32万件、2015年はおよそ22万件、2014年はおよそ19万件でした。
2014年から2016年にかけて逆に増えています。
これらの統計からすると、暴行や障害という、警察に通報し事件に繋がるようなあからさまないじめ、例えばひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりするようないじめは減少しています。
ところが、学校が認知するその他のいじめ、警察沙汰にならないようないじめはかなり増加しています。
そうしますと、いじめ防止法がいじめの防止などに効果をもたらしたとは必ずしも言えません。
むしろ、法の介入によって子供のいじめが質的に変化し、潜在化、陰湿化したとも考えられるのではないでしょうか。
法は規範を示しますが、必ずしも実態的解決にはつながらないからです。
規範とは、行為の善悪、正不正の判断基準で、それに関する法律や道徳を規範的知識と言います。
それゆえ、いじめを防止するために法的規範によって対処しても、1人1人の子供と子供同士の関係の実態に迫ることはできません。
ましてや、法的対応だけでいじめを防止することはできません。
法の規範だけで対処するのではなく、子供たちの現状から出発してその解決を追求する人間理解の方法としての臨床的知見が必要になります。