一口に発達障害といっても多種多様であることを忘れないこと。
-----講義録始め------
4番目はADHD(注意欠如・多動性障害)です。ADHDの主な症状は、多動、衝動、そして不注意です。言い換えると、体も気持ちも様々な刺激に容易に反応し、同時に複数の刺激に対する処理がうまくいきません。なので、原則として提示される刺激の数を減らすことが最優先です。ただし、様々な刺激が多い場合は、1つずつ順番に提示するか、重要な情報を強調して刺激の重み付けを行い、大事なところをきちんとメリハリをつけて提示することが大切です。また、注意の持続時間が短いため、長い課題は小刻みに分けて行い、合間に休憩を挟みます。集団への一斉指示だけではなく、本人への個別の声掛けによって注意を向けさせる必要があります。一方、不注意による忘れ物などには積極的に大人が介入し、注意喚起の声掛けや忘れ物防止の工夫をして、周囲のサポートを補います。ADHDは多くは年齢と共に改善が見込まれますが、特性に見合った対処行動が自分でできるようにするために、自尊心を損なうような対応は避けるべきです。
6歳以降で薬物療法が用いられることがあります。日本では数種類の薬物が使用されています。改善率は約70%から80%程度と言われていますが、あくまでも対処療法に過ぎません。薬の助けを借りながら成功体験を積み重ね、発達を促進する必要があります。
次は、特異的学習障害です。特異的学習障害は、文字を読んだり、書いたり、あるいは計算するなど特定の学習能力が発達段階よりも劣っている状態です。分類すると、読字障害、書字障害、算数障害の下位分類に分かれます。
少し前は学習障害という言い方をしていましたが、学習障害は勉強ができない人が全てそうであるかのように誤解されやすいため、DSM-5最新の診断分類では特異的学習障害と名前が変わりました。基本的には勉強が始まる6歳以降に明確になる状態です。
大事なことは、知的発達障害やその他の発達障害がある場合は、そちらが優先されるということです。支援にあたっては、まず知能低下やその他の発達障害がないかをきちんと区別します。知的発達障害やその他の発達障害があれば、まずそちらの対応が優先されます。本物の特異的学習障害では、学習困難さがどのように生じているかの分析と、その分析に応じた学習方法の検討、一つ一つコツコツと段階的に習得していくこと、パソコンやタブレットの導入、そして得意科目を通じて自信の強化などが重要になります。
6番目は発達性協調運動障害です。これは単なる無器用さではなく、中枢神経系の発達の障害の一つです。頻度は約5%とも言われています。大きな体の使い方、例えば歩行やジャンプ、跳び箱、鉄棒などの粗大運動の障害と、手先の障害、細かい作業、例えば鉛筆の持ち方、はさみの使用、ボタンやファスナーなど日常生活の多くの細かい運動の障害からなります。これも単に気合や根性で改善するものではなく、的確なアセスメントと支援が必要です。
苦手な身体活動の分析を行い、本人がやりやすい方法を一緒に考え、一つ一つのスモールステップで苦手さを軽減していくようにします。過度の努力は苦手意識を増やすだけなので、慎重に対応します。
ここまでが代表的な発達障害への支援です。