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平井宏典教授と博物館財政の課題(博物館経営論第1回)♯放送大学講義録

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さて、平井先生は2019年度の全日本博物館学会での研究発表以来、公立博物館における財務データの現状と今後の課題について研究されています。博物館の財政状況は、特に公立博物館では年々厳しくなっていると言われていますが、まずはその背景や原因についてお話しいただけますか。

はい。

最も分かりやすい現象としては、1991年にバブル経済が崩壊し、日本経済が停滞していったことが挙げられます。日本の博物館は7割を公立館が占めており、設置主体である地方公共団体の財政悪化は直接的に博物館に影響します。日経平均株価が最高値を記録したのが1989年(平成元年)です。そこから株価は下落し始め、バブルが崩壊し、経済の面で平成は「失われた30年」と言われ、日本の博物館界でも「冬の時代」と言われています。

直接的な原因は、この博物館を取り巻く経済状況の深刻な悪化ですが、その背景はもう少し複雑です。経済が悪化し、税収が下がっても、予算を削減しづらい分野があります。例えば、医療や福祉、教育などがその典型です。簡単に言えば、博物館、ひいては文化芸術はその削減しづらい分野に入ることができなかったというのが、現在の厳しい博物館の財政状況につながっていると考えています。

なるほど。今非常に大事なお話がありましたが、博物館、ひいては文化芸術がその削減しづらい分野に入ることができなかったというお話でしたが、これは一体なぜでしょうか。

そうですね。どんなに健康な人でも、どんなに勉強に興味のない人でも、一生のうちに一度も病院や学校に行ったことがないという人は、この日本ではいないでしょう。

そうですね。はい。

一方で、博物館の場合、歴史や科学、美術など、その分野に興味のある人しか行かない。趣味嗜好の問題だと捉えられているように感じます。もちろん、博物館が社会で果たす役割は趣味嗜好の問題ではないことは、博物館学を勉強している皆さんはよく理解されていると思います。しかし、多くの市民にとって、博物館とつながるチャネルは展覧会くらいしかありません。来館しない人にとっては博物館の重要性を感じづらい。それが、削減しづらい分野に入ることができなかった理由だと思います。

なるほど。