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非営利組織としての博物館経営の課題(博物館経営論第1回)♯放送大学講義録

-----講義録始め-----

 

そもそも博物館は非営利組織なのですが、この「組織」という名称自体が誤解を招きやすいものだと思っています。非営利組織も営利事業、つまりお金儲けをしてもいいのです。ただし、その得た利益を組織外の利害関係者に配当などの形で分配してはいけないという点が違います。利益は使命を達成するために事業に使い、再投資するのが非営利組織の特徴です。

ここで「非営利組織」という言葉が出てきましたが、この組織の性質について、非営利組織は基本的に得た利益を組織外の利害関係者に配分せず、使命を達成するために事業への再投資を行うものだと説明いただきました。では、非営利組織である博物館では、経営学で言う「経営」というものは馴染まないと考えるべきでしょうか。

そうですね。これはなかなか難しい問題です。そもそも日本では非営利組織に「経営」は馴染まないという風潮があると思います。お金儲けは悪いこと、まやしいことだから、非営利で志が高いなら「経営」なんて言葉を使っちゃいけない、少なくとも控えめにしておかなければならないという感覚があるのかなと思います。

しかし、私は博物館も使命から外れない限り、大いにお金儲けをすれば良いと思っています。お金を取るべきではない公益的な部分と、野心的にお金儲けをする部分、もしくはできる部分をしっかりと線引きし、自分たちが実現したいことを達成するために稼ぐべきところではしっかり稼ぐべきだと考えています。

少し古い話になりますが、1984年、メイソンという学者が『Voluntary Nonprofit Enterprise Management』という書籍の中で、非営利組織は内部に2つの異なるシステムを持つと述べています。2つの「バイタルシステム」です。例えば、難民支援の団体は難民に対して様々なサービスを提供しますが、難民からはお金を受け取りません。その代わりに、支援者や寄付者に対して、組織を維持するために必要な資金などの貢献をお願いしています。

つまり、難民に対する支援が「サービス提供システム」であり、もう一方で、他の人からお金をもらって組織を維持するのが「資源獲得システム」と言えます。この2つのシステムを同時に持っているということです。

日本で議論される博物館経営論の多くは、どちらかというと「サービス提供システム」に偏っています。しかし、支援者や寄付者からお金をもらって組織を維持する「資源獲得システム」に関する議論や研究は、まだまだ日本の博物館では発展途上だと感じています。このメイソンの研究のように、経営学や経済学の世界でも非営利組織の研究は進んでいます。ですので、もっとそうした知見を日本の博物館経営にも取り入れていきたいと考えています。

この分野も、ぜひ平井先生にこれから研究を進めていただきたいと思っています。