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博物館経営論と連携の重要性(博物館経営論第1回)♯放送大学講義録

-----講義録始め------

 

次に、博物館経営論の構成要素についてお伺いします。印刷教材にも説明がありますが、その要素に関してどのようにお感じでしょうか。

はい。文化庁が示している大学における学芸員養成科目の改善について記載されている内容は、ある種、オーソライズされたものだと思います。例えば、行財政制度と財務の2つがありますが、これについてどうお考えですか?

そうですね。契約の観点から言えば、「財務」という言葉はパブリックファイナンス、つまり公的な組織や機関のお金の動きを指します。では、なぜ「行財政制度」とわざわざ記述するのでしょうか。また、行財政制度と財務を分ける意図は私には理解できますが、この博物館経営論の中で、どこまで学問的に明確化されているのかについては疑問があります。

なるほど。他にも「連携」についての内容を見ると、連携する相手が列挙されているだけのように感じます。計画論では、戦略的連携やネットワーク論、オープンイノベーションなど、連携に関する体系的な理論がありますが、それが内容と一致していないように思います。

今、連携の理論についていくつか名前が出ましたが、どれか一つ概要を簡単に説明していただけますか。

はい。最も初歩的な部分になりますが、「戦略的連携」はなぜ行われるのかというと、それは企業間のネットワークの中で範囲の経済を実現しようとするからです。例えば、A企業がA製品を、B企業がB製品を、C企業がC製品をそれぞれ作るよりも、1つの企業が複数の製品を作った方が効率的になることを「範囲の経済」と言います。この範囲の経済は、企業の多角化の理由としても言及されています。

戦略的連携は、企業間のネットワークによって形成された擬似的な一つの大きな組織体の中で、範囲の経済を実現しようというものです。そのネットワークの中で固定費を分散させたり、ノウハウを共有したり、シナジー効果を発揮することを目的に戦略的連携を結ぶことは、経営戦略の基本的な部分として、私も大学の授業で教えています。

しかし、博物館の連携の重要性が多くの人に指摘されていますが、その理由や経営的なメリット、デメリットを理論として語れるかどうかについては、まだまだ課題が多いと感じています。こういった点は、私自身も勉強を続けながら取り組んでいきたいと思っています。

今の連携の話は、私も耳が痛いです。確かに必要性や重要性は言っていますが、具体的なデメリットやメリットをどこまでしっかり説明できているのか、自分自身を振り返って考えさせられました。