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離婚時の年金分割制度と手続き(人生100年時代の家族と法第4回)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 

最後に、6つ目のテーマである年金分割についてお話しします。

日本の公的年金は2階建て構造となっており、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金が1階部分です。そして、会社などに勤務している人が加入する厚生年金が2階部分に当たります。

厚生年金は、離婚時に年金分割を行うことができます。この年金分割制度は、平成19年(2007年)4月1日に開始されました。

年金分割制度は、実際に支給される年金額を分割するのではなく、年金計算の基礎となる保険料納付記録のうち、婚姻期間の部分だけを分割するものです。例えば、元妻が元夫から年金の分割を受けると、元妻自身の保険料納付記録に元夫から分割された保険料納付記録が合算され、それに基づいて元妻が受け取る年金額が計算されます。年金分割の請求期限は、原則として、離婚をした日、婚姻の取り消しをした日、事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められる日の翌日から起算して2年以内です。第3号被保険者とは、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満で、年収が130万円未満の配偶者を指します。

年金分割制度には、合意分割と3号分割の2つがあります。合意分割制度は、離婚、婚姻の取り消し、または事実婚の解消をした場合に、当事者の合意または裁判手続きにより按分割合、つまり分割する割合を定めれば、婚姻期間中の保険料納付記録を分割することができるというものです。当事者間で合意ができた場合は、1. 公正証書、2. 当事者が作成した合意書で公証人の認証を受けたもの、3. 年金事務所等分割実施機関所定の合意書のいずれかを添付して分割請求をしなければなりません。当事者間で合意ができなかった場合は、家庭裁判所で年金分割調停や年金分割審判、もしくは離婚裁判における付帯処分のいずれかにより按分割合を定める必要があります。ほとんどの事例で按分割合は0.5と定められています。つまり、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録は、元夫婦間で半分ずつに分割されるということです。

次に、3号分割制度ですが、平成20年(2008年)5月1日以後に離婚し、かつ婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間があることが前提となる制度です。この場合、第3号被保険者であった者が請求すれば、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方配偶者の保険料納付記録の2分の1を分割することができます。先ほどの合意分割とは異なり、3号分割では当事者間の合意は必要ありませんので、第3号被保険者であった者は単独で分割を請求することができます。

離婚は、ただ当事者の身分関係を解消するだけではなく、財産関係の清算という側面もあります。

第4回では、離婚に関して生じる問題として、婚姻費用分担、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割の6つを取り上げました。別居が始まれば婚姻費用の分担の問題があり、離婚に付随して財産分与や慰謝料という問題も発生します。さらに、養育費や年金分割といった問題もあります。