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看護学理論と中範囲理論の発展(看護学概説第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

演繹的推論に基づく理論開発には、ジョンソンの行動システム理論があります。
この理論はシステム理論に基づき、人間を多数の行動の集合体からなる「行動システム」と見なし、環境との相互作用を通じてバランスを維持する構造を示しています。各サブシステムについては、心理学者、社会学者、人類学者などによる記述が裏付けとなっています。このように、ジョンソンの行動システムモデルは複数の学問分野に基づいて構築されています。

機能的推論に基づく理論開発には、ベナーの看護論があります。
ベナーは新人看護師から熟練看護師までを対象にインタビューを行い、データを解釈的現象学の手法で検討しました。この研究は、ドレファスの技術習得モデルを用いてまとめられ、看護師が臨床経験を積む中で技能を習得し成長していく過程を5段階で記述しています。

ロバート・マートンの中範囲理論は、1900年代のアメリカ社会学における2つの主要な潮流に対する批判として提唱されました。
1つ目は、すべての社会に適用可能な一般理論を構想するもので、理論を理論として追求し、経験的調査や歴史研究を軽視する傾向です。
2つ目は、特定の社会現象について詳細な経験的研究を行うものの、そこから一般的な理論を導き出す問題意識が乏しいものでした。

マートンは、これら2つの極端な立場に対し、理論を理論として追求するのでもなく、単なる経験的調査に終始するのでもない「中範囲理論」の重要性を説きました。中範囲理論は、社会学を実証的でありながらも理論的な方向へ修正する試みです。マートンは、理論研究では経験的な裏付けが必要であり、調査研究では得られた知見から理論的一般化を目指す必要があると主張しています。そうでなければ、社会に貢献できる知識は生み出されないと述べています。

看護学においても中範囲理論が開発されています。
例えば、バンデューラの「自己効力感に関する理論」などがあります。中範囲理論は、一般理論に比べて適用範囲は狭いものの、特定の領域に限定することで実践への適用可能性が高まります。看護学の発展には、新たな知識を蓄積することが必要であり、研究を通じて社会に貢献できる知識を生み出すことを忘れてはならないとされています。