-----講義録始め------
そして、平成期、1989年から2019年にかけて、我が国は第3の立法期を迎えることになりました。第1の立法期は欧米に追いつくための近代化、第2の立法期は戦後の社会の民主化に応じたものでした。1996年(平成8年)、法務省の法制審議会は、民法改正案要綱を公表しました。その中には、民法第750条を改正して「選択的夫婦別氏制度」(一般には「選択的夫婦別姓制度」と呼ばれています)の導入が提案されていました。
この提案から約30年が経過しましたが、未だに選択的夫婦別姓制度の導入については合意が形成されておらず、民法第750条の改正は実現していません。この問題については、次回、第2回の講義で取り上げます。
では、「第三の立法期」と言われる平成の間に行われた民法の改正のうち、比較的大きな改正をざっくりと見てみましょう。1999年(平成11年)には、社会の高齢化に対応するために介護保険法が制定され、介護保険制度が創設されました。そして、介護保険制度を適切に利用するために、民法を改正して成年後見制度が導入されました。民法第7条以下にその条文があります。この2つ、介護保険制度と成年後見制度は、当時「車の両輪」と呼ばれ、大きな期待を集めました。この講義の第9回で取り上げることになります。
また、2018年(平成30年)には2つの大きな改正が行われました。1つは、民法第4条が定める成年年齢、すなわち成人年齢を20歳から18歳に引き下げるとともに、民法第731条で婚姻できる年齢、これを婚姻適齢と言いますが、婚姻適齢を男女平等にする改正です。もう1つは、社会の高齢化や相続をめぐる国民の意識の変化を受けて、相続法、つまり民法第5編「相続」の大改正でした。そして、令和に入ってからも民法を改正する動きが続いています。
2021年(令和3年)には、所有者不明土地問題や空き家問題に関連して相続法が改正されました。家族は常に変化しています。したがって、家族に関する法制度も、現実の家族や家族紛争に合わせて変化することが求められていると言えるでしょう。