ーーーー講義録始めーーーー
コロナ禍が地域福祉にもたらした課題
新型コロナウイルス感染症の拡大は、地域福祉活動に大きな試練をもたらしました。地域福祉活動は、地域において人と人とのつながりを築くことを目的とします。しかし、対面での交流が制限される中で、どのようにしてつながりを維持できるのかという根本的課題に直面しました。
豊中市における活動の工夫と変革
活動再開ガイドラインの策定
豊中市では2020年5月21日、1回目の緊急事態宣言解除を受けて「地域福祉活動再開ガイドライン」を策定しました。これは全国的にも先駆的な取り組みであり、住民や専門家の助言を得ながら、このガイドラインを基に様々な活動が再開されました。
活動形態の変更
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食事会 → テイクアウト方式
庄内南校区では、毎月地域の集会所で実施していた70歳以上の高齢者向け食事会を、お弁当のテイクアウト方式に変更。配布時に声をかけて安否確認を行いました。 -
体操教室 → ウォーキング
「ぐんぐん元気塾」という体操教室を「ぐんぐんウォーク」に改め、屋外での散歩形式に切り替えました。 -
屋外での活動
キッチンカーを活用し、短時間で住民が集まれる場をつくり安否確認を実施しました。
ICT活用への挑戦
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YouTubeによる情報発信
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オンライン会議の実施(例:一人暮らし高齢者の会の連絡会)
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往復はがきや電話、文通といった従来手段の再評価
見守り活動の新たな展開
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「無事ですシート」の活用
災害時に使用される安否確認用シートを、コロナ禍でも日常的な見守り活動に応用しました。 -
「あんしんキット」の普及
民生委員が一人暮らし高齢者に配布し、緊急時に必要な情報(緊急連絡先・かかりつけ医・服薬情報・保険証コピー等)を冷蔵庫に保管することで救急対応を支援しました。
地域福祉活動の本質的価値の再認識
コロナ禍を通じて明らかになったのは、地域福祉における「見守り活動」が単なる安否確認ではなく、つながりそのものを維持する営みであるという点です。「顔が見えている」「あの人が心配だ」という日常的な関係性があったからこそ、途絶えさせないための多様な工夫が生まれました。
豊中市の実践は、地域福祉の基本である「つながりづくり」「地域組織化」の積み重ねが、危機時の大きな力になることを示しています。