ーーーー講義録始めーーーー
産業・組織心理学とは何か
産業・組織心理学は、労働や組織の場面における人間行動を科学的に理解し、より良い働き方や組織運営を実現することを目的とした心理学の一分野です。この授業では大きく4つの事柄について学んでいきます。第一に組織における人間行動の特徴、第二に人材の育成や開発、第三に職場で発生する安全の問題や心理的ストレスへの対処、そして第四に消費者心理です。
心理学は人間の心に関する学問であり、その源流は古代ギリシャの哲学や倫理学にまでさかのぼることができます。しかし、心理学が独立した学問として確立したのは19世紀後半です。とくに1879年にヴィルヘルム・ヴントがライプツィヒ大学に心理学実験室を設立したことが、実験心理学の始まりとして広く認められています。人類史から見れば比較的新しい学問分野ですが、その発展は急速でした。
心理学は、人間の心を哲学的に思索するだけでなく、自然科学の方法を取り入れて、観察や実験を通じて仮説を検証することを重視します。この学術的潮流のなかで、20世紀初頭にはアメリカを中心に産業心理学の研究が盛んになりました。代表的なものに、ヒューゴ・ミュンスターバーグが1913年に著した『Psychology and Industrial Efficiency』があります。
さらに1920〜30年代のホーソン実験を契機に、人間関係論の視点が導入され、研究対象は単なる作業効率だけでなく、組織における人間関係や動機づけへと広がりました。そして1960年代以降、「産業心理学」と「組織心理学」が統合されるかたちで「産業・組織心理学(Industrial and Organizational Psychology)」という名称が一般化し、今日に至っています。







