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産業・組織心理学の4つの研究領域(後半) #放送大学講義録(産業・組織心理学第1回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

第3領域:安全衛生(Occupational Safety and Health: OSH)
安全衛生は、働く人々の安全と心身両面の健康を保護・促進するための方法を研究する領域です。知覚心理学、人間工学、認知心理学、臨床心理学など多様な観点から検討されます。

具体的な研究テーマとしては、作業能率や品質向上のための方策、ヒューマンエラーや不安全行動を未然に防ぐ安全管理、疲労やストレス・ワークロードの影響とその改善、ワークライフバランスの維持やソーシャルサポート促進、ストレスマネジメントと労働環境アセスメント、従業員支援、メンタルヘルスの確保方略などが挙げられます。

従来は職務中の危険から労働者を守る安全管理が中心的課題でしたが、近年は燃え尽き

 

症候群、過労死、うつ病など深刻な事例や、職場におけるハラスメント問題が顕在化し、メンタルヘルス対策の重要性が高まっています。また、モラルの欠如や企業倫理の問題に起因する企業不祥事も後を絶たず、コンプライアンス(法令遵守)の徹底も不可欠になっています。

さらに、ジェンダー平等推進のための職場環境整備、障害者が安心して働けるバリアフリー職場の実現、国籍や文化の異なる人々が協働できるダイバーシティ環境の構築なども重要な課題です。安全衛生領域の研究は今後さらに重要性を増し、多様な研究テーマと向き合うことが求められています。


第4領域:消費者行動(Consumer Behavior)
産業・組織が持続可能性を高めるには、社会に必要とされ、消費者の購買意欲を喚起できる商品やサービスを提供し、販売を拡大して利益を上げることが不可欠です。

消費者行動の研究は、購買意欲を高める要因、広告や宣伝の効果、消費者心理と購買行動の特性を明らかにする領域です。主な研究テーマには、態度と行動の関係、価値判断と心的会計(Thaler, 1980s)、購買意思決定におけるヒューリスティック(直感的判断)、損失回避を示すプロスペクト理論(Kahneman & Tversky, 1979)、将来価値を過小評価する双曲割引などが含まれます。

行動経済学と関連が深く、2002年にダニエル・カーネマン、2017年にリチャード・セイラーがノーベル経済学賞を受賞するなど、人間の非合理的判断を扱うこの領域は大きな注目を集めています。

また、ブランド・ロイヤルティ、ネットショッピング、悪徳商法、販売促進戦略(直接の値引きかポイント付与かなど)も重要な研究対象です。研究によれば、消費者は状況に応じて値引きを好む場合とポイント付与を好む場合を使い分けていることが示されています。


まとめ:産業・組織心理学の重要性
産業・組織心理学の4つの主要領域(組織行動・人的資源管理・安全衛生・消費者行動)は、学術的にも実践的にも広範な対象を含みます。職場のストレスやメンタルヘルス、ワークモチベーション、リーダーシップ、人間関係、キャリア形成、マーケティング戦略など、私たちが健やかに充実した仕事生活を送るために直結するテーマを数多く扱っています。

今後の講義では、各領域の具体的テーマに踏み込み、理論と実践の双方から理解を深めていきます。産業・組織心理学を学ぶことは、資格試験の受験にとどまらず、実際の職業生活や組織経営においても有益な知識と視点を提供するものとなるでしょう。

 

領域 定義・対象 主な研究テーマ 特徴・役割
組織行動 (Organizational Behavior) 組織に所属する人々の心理・行動特性や、集団としてまとまるときの行動を明らかにする領域 パーソナリティ、個人差、意思決定、職場人間関係、葛藤調整、コミュニケーション、組織適応、ストレス、チームワーク、リーダーシップ、組織文化 基礎的・理論的研究が中心。他の領域(HRMや安全衛生)の土台となる知見を提供
人的資源管理 (Human Resource Management: HRM) 経営資源「人」を組織の目標達成のために制度的に活用する領域 募集・採用、適性評価、人材配置、キャリア開発、教育研修、人事考課、昇給・昇進、労働時間管理、退職制度設計 応用的・実務的研究が中心。組織行動の知見を基盤にし、人材活用を通じて生産性・業績を高める
安全衛生 (Occupational Safety and Health: OSH) 労働者の安全と心身の健康を確保・促進する領域 安全管理、ヒューマンエラー防止、疲労・ストレス・ワークロードの影響、ストレスマネジメント、メンタルヘルス、ワークライフバランス、従業員支援、コンプライアンス、ダイバーシティ環境整備 健康・安全を基盤に組織の持続可能性を支える。近年はメンタルヘルス・ハラスメント対応や多様性推進が重要課題
消費者行動 (Consumer Behavior) 消費者心理と購買行動を明らかにし、マーケティングや販売促進に応用する領域 態度と行動、心的会計、購買意思決定、ヒューリスティック、プロスペクト理論、双曲割引、ブランド・ロイヤルティ、ネットショッピング、広告・販売戦略 行動経済学とも連携し、消費者の非合理性に注目。購買意欲を刺激する戦略の検討に直結する実践的領域

 

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