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「健康」とは病気がないことではない――85.5%が「ふつう以上」と答える主観的健康感から考える健康への力 #放送大学講義録(健康への力の探究第1回その1)

【要約】

 

健康は単に病気がない状態だけを意味するものではない。WHOは健康を身体的・精神的・社会的なwell-beingとして捉え、health promotionでは日常生活を営むためのresourceとも位置づけている。平成28年国民生活基礎調査では、6歳以上の85.5%が自分の健康状態を「よい」「まあよい」「ふつう」のいずれかと評価している。65歳以上では約68.7%が傷病で通院しているにもかかわらず、およそ75%が少なくとも「ふつう」程度には健康だと感じている。このことから、健康は疾病や通院の有無だけでは判断できず、本人の主観的な評価や心理的・社会的側面も重要であることがわかる。健康を支えるためには、riskだけではなく、人が持つ資源やhealth literacy、さらに情報を利用しやすくする社会や組織の環境にも目を向ける必要がある。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

健康とは何か――自己評価としての健康

(「健康への力」とは何か)
「健康への力とは」についてお話しします。そもそも健康とは何でしょうか。皆さんはどのように思いますか。

(健康を一つの定義だけで捉えない)
専門家の間でも健康についてはさまざまな議論があり、迂闊に健康を一つの言葉だけで定義すると、いろいろな角度から指摘を受けることになると思います。他方で、人それぞれが「健康とはやはり心が穏やかなことだ」などと、自分なりの思いを持っていることも多いでしょう。今日は、その健康の代表的な定義について知るとともに、健康を一つの「力」あるいは日常生活を営むためのresourceとして捉える見方について解説しましょう。WHO憲章では、健康を単に病気や虚弱がないことではなく、身体的・精神的・社会的なwell-beingの状態として捉えています。また、健康をより広く考える際には、全人的健康やwell-beingといった考え方を通して、人がどのように充実して生きるか、人生の意味や目的をどのように感じるかという側面にも目を向けることができます。さらに、病気につながるriskだけを見るのではなく、健康を生み出し、維持する要因やhealth literacyなど、人や社会が持っている資源や力にも注目し、それらを向上させるためにはどのような支援や環境づくりが必要なのかについて解説します。WHOのhealth promotionの考え方でも、健康は人生そのものの目的というより、日々の生活を営むためのresourceとして位置づけられています。

(自分の健康をどう評価しているか)
まず、健康の定義についてです。人々は健康をどのように捉えているのか考えてみましょう。皆さんは、自分の今の健康状態についてどう思っていますか。日本で、自分は健康だと思っている人がどのくらいいるのか見てみましょう。厚生労働省による平成28年(2016年)の「国民生活基礎調査」では、6歳以上の人に対する「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問に対して、「よい」が20.7%、「まあよい」が17.8%、「ふつう」が47.0%、「あまりよくない」が11.2%、「よくない」が1.8%となっています。「ふつう」という回答が5割近くを占めて最も多いのですが、「よい」「まあよい」「ふつう」を合わせると、実に85.5%の人が、少なくとも「ふつう」程度には健康だと自分自身の健康状態を評価しているということです。ここで見ているのは医師による診断ではなく、本人が自分の健康状態をどう感じ、どう評価しているかという「主観的な健康評価」であることにも注意してください。

(高齢になっても「健康」と感じる人は多い)
自分を少なくとも「ふつう」程度には健康だと思う人の割合は、概して若い年齢層ほど高く、高齢になるほど低くなる傾向があります。しかし、65歳以上であったとしても、およそ75%の人が「よい」「まあよい」「ふつう」のいずれかを選んでいます。一方、傷病、すなわち怪我や病気で通院している人の割合を見ると、平成28年の国民生活基礎調査では、20~29歳が約14.1%、30~39歳が約15.7%であるのに対し、65歳以上では約68.7%に達します。つまり、高齢者の通院率は20~30代の4倍以上になります。それにもかかわらず、65歳以上でも約4人に3人が少なくとも「ふつう」程度には健康だと自分の健康状態を捉えているのです。ここから、怪我や病気があるかないか、あるいは医療機関に通院しているかどうかだけで、人が自分を「健康」と感じるかどうかが決まるわけではないことがうかがえます。健康とは、疾病の有無だけでは捉えきれないものだということです。