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健康と格差(健康と社会第14回)

もしかしたら格差社会化で日本の平均寿命は大幅に下がる方向へいくのかもしれない。年金額の格差はかなり酷くなるだろうし。抜本的に年金制度を変えないと国民全体の健康の維持も難しくなってくるかも。

 

戸ヶ里泰典。健康と格差。格差社会は00年代に流行語にも。一億総中流。規制緩和で自由競争化。成果主義。派遣労働。非正規労働。日本型雇用の崩壊。格差は希望にも関わる。平等であるはずの健康にも。格差と不平等を始めとする鍵となる用語。何故社会格差が健康格差に繋がるか、そのメカニズム。健康の格差、不平等を解消する方策は?
格差。学問の領域の意味は異なるかもしれない。用語の学術的意味を押さえるのは大事。格差とは理想的な水準があって、上と下にどれだけ離れてるか。医療費や教育費。本来差があることが望ましくないことに差がある場合を不平等という。社会経済的な不平等。公平、公正。ほぼ同義?学問的には異なる。平等や公平、公正。平等。一定の価値や規範の元での均等の分配。公平。自己のアウトカムとインプットの比を。両者で同じ。自分が関わる報酬との比に差が生じていないこと。公正。規則や規律、規範に見合っている。日本国内で時給100円は公正ではない。健康については健康の不平等の研究が昔から多い。優劣が在るべきではないという意識。公平。健康状態そのものでなく、要因の関わり方にも。社会経済的な要因。社会経済的地位。社会的資源。所得や財産からなる富、勢力、威信、情報の4つで構成。社会的資源とは人々が手に入れたいと思うもの。生きる上での糧。社会的資源の量の大小を。少ないと地位が低い。同じような地位の人の集団。中間管理職など。年収1000万人以下の集団など。社会階層。社会学や経済学では金銭的なグループが。不平等には2種類。結果の不平等。受け取るものの差。同じように働いていても賃金が少ない。病気の完治と治りが悪い時。機会の不平等。活動を行うチャンスの差。全ての人に公平に参加する機会があるのが結果の平等。就職する機会や保健サービスを受ける機会など。結果の不平等や機会の不平等は便利な考え方。結果の不平等だけを見ていても解決しない。機会の不平等に着眼を。資産の不平等など。健康は結果の不平等の1つの尺度。健康は手段に過ぎないとみなすこともある。健康の差も機会の不平等と捉える経済学の考え方も。格差と不平等の違い。不平等は価値がついてくる。健康自体が収入などにより差が生じる時。健康に社会的格差が生じていると言える。この格差は不平等?人が健康であるということは健康権と言われ、基本的人権の1つ。不平等であると言える。健康の格差は?アメリカの研究。富裕層の白人女性。平均で86歳まで生きられる。貧困層の黒人女性、70歳までしか期待できない。イギリスでは40歳から60歳の公務員の追跡研究。4倍死亡率が高い。日本。00年代の半ば頃の調査。高齢者3万2千人。100万円以下の人は、男性で6.9倍の人がうつ症状に。労務職の人が健康でないという回答が高い。健康の不平等の存在が実証。
社会格差と健康との関係についての歴史。18世紀のイギリスの産業革命。農業社会から工業社会へ。様々な社会構造の変化。工場労働者へと移動、人口の都市集中。当初は権利を与えられなかった。女性や子供も。良いものではなく、貧困や不平等が問題に。1842年にチャドウィック。階層に分けてデータを収集。ロンドン市の貴族階級の平均寿命は42歳、労働者は25歳。乳児死亡率。肉体労働者では2.5倍に。理由としては生活の劣悪化、上下水道の未整備など。死亡に大きく関わっていたのは細菌感染症が。先進国では上下水道の整備が進み、徐々に問題となる疾病は非感染性疾病に。心臓病も貧困層の病気に。肥満も逆転して貧困層に多くなった。アメリカやイギリス、日本でも健康の不平等が。社会的要因として所得の格差。ある集団の中での所得の格差を、ジニ係数。1に近いと格差が大きい。パーセンテージで。日本のジニ係数は?アメリカは45%。フランスは32.7%。日本は37.9%。北欧の国は低水準。中国アメリカ・ロシアについで4番目に多い。日本のデータは11年。04年は27.8%。年々上昇。ウィルキンソン。平均寿命との関係。所得が5000ドル以下、平均寿命が伸びる。格差がある。1人あたり国民所得の5000ドル以上の国々の間では、所得が高くなっても平均寿命が高くなるとは限らない。所得そのものではなく、所得格差との関係。負の関連性。所得格差が大きいほど長く生きることが難しいことを示す。所得が少ない人が多い国でも格差が少ないと長生きできるということ。ジニ係数と平均寿命の関係。日本はやや例外的。アメリカ中国ロシアというジニ係数が高い国は平均寿命が短い。絶対的な所得の大小とは関係がない。GDPの一番多いアメリカ。北欧諸国では所得格差が小さく寿命も長い。幸福状態は所得水準でなく、他の人の所得水準などにも依存する。周りと比べてどうなのかが問題。相対的所得仮説と呼ばれる。何故、社会的不平等が健康を奪うのか。その理由。先進諸国の不平等が。人間は常に自分は優位なのか、ストレスになる。霊長類の実験でも明らかに。見下されたり低く評価されたりするのに敏感で、直接ストレスになる。地域を構成する人々の格差が大きいことにより、信頼関係や強さが弱められる。自己中心的で競争的、攻撃性が増す。信頼しあっていたり社会に参加していたり、様々な関係性、社会関係資本。構成する社会的な結びつきは健康に結びつく。相談相手のネットワーク。生存率に大きく関わる。結婚している人が健康に。親の社会的地位の差が、子どもの情緒的な。生育環境に差が、ストレスに。健康の社会的格差や不平等は、医療の問題ではない。裕福な人ほど医療にかかる、というメカニズムがあるのかもしれない。実際のところ、医療で健康を維持している確率はずっと小さい。医療体制が充実することで健康状態が高まるのではなく、健康を害する状態が多いので医療体制が整備されているというメカニズムが。WHOは03年までに「確かな事実」というレポート。10の決定要因。社会経済的格差が第1の要因として。05年のバンコクの会議。格差の縮小が必要。バンコク宣言。
社会関係資本と今後の課題。社会格差と健康との重要な要素に社会関係資本が。友達や相談し合う人、情報を交換する人、色んなことでプラスになる人。配偶者やパートナーという存在。働きかけてくれた人も他の人から助けたりする。網の目のように。社会的ネットワーク。70年代にバークマン。社会的に孤立しがちな人はそうでない人より3倍から4倍死亡率が高い。自分ひとりでなく地域全体に。社会関係資本という考え方が提唱。その人が生きていく元手が社会関係である。目に見えないもの。近所や地域にある人と人との関係。住んでいる地域の人々はとても信頼できる土地柄、地域を良くする自治会に参加する人が多い、様々な地域の特徴。保健、公衆衛生学の検討。健康であるという実証研究が。社会関係資本がよりよい健康に繋がる。サービスの享受に。精神的なストレスが少なくなる。健康が社会的要因により左右される。健康的に生活する為には、所得や職業、学歴などの社会格差や社会関係資本などの整備が必要に。個人の問題ではなく組織や政治の問題に。少なくとも平等に近づける政策が必要。ウィルキンソンは市民の考え方を変える必要を。ある人の資産が増えると、相対的に貧困になるということを考える必要がある。自分自身の儲けを多くする方に流れがちだが、経済の活性化が相対的格差の拡大に繋がり、楽観的に考えることは出来ない。相対的経済的格差が広がるにつれ、高所得者も健康的にはならない。目に見える他者だけでなく目に見えない他者への配慮が必要。排除ではなく。同時に他人へのいたわりや優しさを。しかし元々は無かったもの?地域における人と人との結びつきは強かった。その頃に比べ人間関係が疎遠になった?健康やより良い生に繋がる。社会関係資本を取り戻すことは我々に課せられる課題。

 

健康と社会 (放送大学教材)

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