-----講義録始め------
さて、ここまでグリーフサポートとは何かについて解説してきましたが、最後に本科目のタイトルにもあるように、グリーフサポートと死生学の関係について簡潔にお話ししておこうと思います。
すでに教科書に一通り目を通された皆さんは、グリーフサポートの話ばかりで、死生学の話がほとんど出てこないため、「これは看板に偽りありではないか」と思った方もおられたかもしれません。特に、少しでも死生学の総論的な説明を期待しておられた方は、拍子抜けされたことでしょう。しかし、私たち講師陣が本科目で重点を置いたのは、死生学という広範なフィールドを持つ学問の総論ではなく、この学問分野における主要なトピックの一つであるグリーフサポートに関する各論です。
だからこそ、科目名を「死生学とグリーフサポート」ではなく「グリーフサポート」としました。ちなみに、死生学の総論を読みたい方は、基幹テキスト「死生学のフィールド」や「死生学入門」を紐解いてみてください。死生学は、死にまつわる多様な事象の考究を通して私たちの生を問い直す学問であり、実践的、学際的、実存的なアプローチを特徴としています。したがって、死生学におけるグリーフの取り上げ方には、グリーフを抱える喪失体験者の苦難をいかに軽減あるいは解消できるのかという実践的なサポートやケアの視点が根底にあります。
だからこそ、グリーフそれ自体に関する研究の成果にとどまらず、グリーフサポートやグリーフケアのあり方を問う実践的な研究に関する知見も蓄積してきました。また、死生学の持つ学際性に鑑みると、グリーフサポートに焦点を当てた本科目の講師陣の専門が、社会学、心理学、精神医学、看護学、そして社会福祉学と、実に多岐に渡ることは必然であると言えます。かつ、私たちは皆、グリーフサポートの実践に携わってきており、この点は死生学の実践性のみならず、実用性を体現しているとも言えるでしょう。つまり、私たちは、現代日本をもっとグリーフサポートが当たり前に存在し、選択できる社会にしていくべきだという理念を持ち、主体的にグリーフサポートという社会問題の解決に身を置いて、微力ながらも社会変革に携わっています。
以上のことから、本科目におけるグリーフサポートの取り上げ方がいかに死生学的であるかをご理解いただけたでしょう。受講生の皆さんは、自分はグリーフのどんなところに特に興味を覚えるのか、自分ならどのようなグリーフサポートに携わりたいか、そしてすでにグリーフサポートに取り組んでおられる方は、自分が直面している問題を解決するヒントが見つかるのではないかといったそれぞれの観点で、本科目のグリーフサポートと死生学を学び、得られた気付きや知見をそれぞれの実践や生活で活かしていっていただければと思います。
今後の授業も楽しみにしていてください。以上で第1回講義を終わります。