文中の小林秀雄の引用は正確ではないかもしれない。
ーーーー講義録始めーーーー
小宮山さんの生涯学習の始まり
小宮山さんご自身が生涯学習というものを意識したのはいつ頃だったのでしょうか。
自分に当てはめて考えてみると、本を書き続けるには、ある1つのきっかけがあったそうです。子どもを教え始めて18年ほど経つと、様々なタイプの子どもや保護者の方に出会いました。塾を上手に利用している方もいれば、残念な方もいました。当然、前者の方が学力は向上し、受験もうまくいきます。
そのことを多くの人に伝えたいと思い、400字詰め原稿用紙で約300枚、そのことをまとめてみました。30近くの出版社に手紙を出し、3社からオファーがあり、その1社から保護者向けの本を初めて出版しました。
その時代、類書がなかったこと、それから毎年300以上の持ち込みの原稿がある中で出版してもらい、編集長の方から「小宮山さんの文章はしっかりしているよ」と言われました。こういうプロの人からの励ましが、その後の活動に強い影響を与えました。
小宮山さんの生涯学習の始まりは、実はこの時、39歳からだったと言ってもいいかもしれません。
学習を始めるには遅すぎることはなく、いつでもなりたい自分になれると言われます。小宮山さんは、39歳という時期に本を書くということによって、人生のターニングポイントを迎えられたのですね。
学習を継続するためのエール
小宮山さんには学習動機について貴重なお話を伺ってまいりましたが、最後に、放送大学で学んでいる方たちに、学習を継続するために何かエールをお送りいただけるでしょうか。
先ほどから、学習に感情が関わるということの話が出てきました。皆さんにこれからも豊かな心で学習を進めていってほしいと思います。
小林秀雄「美を求める心」
かつて1980年代までに中学の教科書に掲載されていた小林秀雄の「美を求める心」の抜粋を皆さんにお送りしたいと思います。
美しいと思うことは、ものの美しい姿を感じることです。美を求める心とは、ものの美しい姿を求める心です。絵だけが姿を見せるのではない。音楽は音の姿を耳に伝えます。文学の姿は心が感じます。
そういう姿を感じる能力は誰にでも備わり、そういう姿を求める心は誰にでもあるのです。ただ、この能力が私たちにとってどんなに貴重な能力であるか、また、この能力は養い育てようとしなければ衰弱してしまうことを知っている人は少ないのです。
今日のように知識や学問が普及し、尊重されるようになると、人々は物を感ずる能力の方を知らず知らずのうちにおろそかにするようになるのです。
小林秀雄は最後に次のように言いました。
感じるということも学ばなければならないものなのです。そして、立派な芸術というものは、正しく豊かに感じることを人々にいつも教えているものなのです。
実はこの言葉、大人になってから小宮山さんはわかったそうです。
おわりに
この朗読を聞いて、正しく豊かに感じるということが大事であること、そして改めて学習と情動が繋がっていることを考えました。
今回は、成人の学習動機と、学習動機の根底にある感情の問題を取り上げました。
学習を継続するためには、内発的動機づけ、フロー体験、感情のコントロール、そして豊かな心が大切です。皆さんも、学ぶ喜びを感じながら、生涯にわたって学び続けていただければと思います。
【キーワード】
学習動機の種類(内発的動機・外発的動機)
情動と学習の関係
フロー体験
自己効力感
学習方略
成人学習の促進要因と阻害要因
Houleの研究(目標志向・活動志向・学習志向)
Verhaeghの8つの原則
【参考文献】
Houle, C. O. (1961). The Inquiring Mind: A Study of the Adult Who Continues to Learn. University of Wisconsin Press.
Csikszentmihalyi, M. (1990). Flow: The Psychology of Optimal Experience. Harper & Row.
小林秀雄「美を求める心」
