信頼に二種類あることを知る。
------講義録始め-------
ここで信頼構築のための2つのモデルについてお話ししていきたいと思います。1つは伝統的な信頼モデルであり、もう1つは主要価値類似性モデルです。
まず、1つ目の伝統的信頼モデルについて説明します。このモデルは、多くの研究成果から導かれ、半世紀以上にわたって信頼形成の主要なモデルとして扱われてきました。伝統的信頼モデルでは、リスク管理者は専門的な高い能力を持っており、安全と安心を心がけ、誠実で他者を思いやる姿勢を持ち、責務を熱心に果たすことが求められます。また、コミュニケーションの相手がリスク管理者の専門的な能力を評価し、その姿勢を認めると、リスク管理者は信頼されるとされています。この信頼モデルには、専門的能力と姿勢を構成する下位項目があります。専門的能力には専門知識や技術力、経験、資格が含まれ、姿勢には真面目さ、コミットメントの熱心さ、公正さ、中立性、客観性、一貫性、中耳さ、透明性、成立性、相手への配慮、思いやりが含まれます。
次に、新しいモデルである主要価値類似性モデルについて説明します。このモデルは1990年代に提示され、人は特定のリスクに関連して自分と共有する重要な価値を持つ他者を信頼するという考え方です。主要価値とは、リスク問題の見方や重要視する要素を指し、このモデルでは、相手の主要価値が自分の価値観と類似していると認知すると、その相手を信頼するとされています。人々はリスクに対して様々な価値観を持っており、その中で共有される価値が信頼の基盤となるとされています。
これらのモデルによれば、信頼構築には専門的能力、姿勢、主要価値類似性の要素が関与します。伝統的信頼モデルと主要価値類似性モデルの有効性については、リスクの種類や関与する人々の属性によって異なるため、どちらがより有効かについては一様な結論が出ていないと言えます。各要素の重要性や影響力は、具体的な状況やリスクの特性によって異なるため、今後も多くの事例研究が行われ、信頼構築のモデルが洗練されていくでしょう。
以上、これまでに信頼の概念、リスクと信頼の関係、そしてディスクコミュニケーションにおける信頼構築の基本的な手法やモデルについてお話ししました。