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博物館の価値と経営の目的(博物館経営論第1回)♯放送大学講義録

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ここでは、博物館の価値について考えてみましょう。印刷教材では、経済学および文化政策における代表的な博物館の価値、文化の価値の考え方を解説していますが、ここでは文化の価値論を見ていきます。合わせて、大阪市ミュージアムビジョンを事例に、ここで述べられている博物館の価値を見ていきます。

その前に、博物館経営の目的は何かを考えてみましょう。

実は、印刷教材の次の節で、我が国の博物館経営論において、経営と運営の意味が定まっていないと説明しています。このことは後半の対談でも触れますが、ここでは何のために博物館を経営するのか、何のために博物館は存在するのかを見ていきます。ICOM(国際博物館会議)における現時点(2022年)の博物館の定義では、博物館とは、社会とその発展に貢献するため、有形無形の人類の遺産とその環境を、教育、研究、楽しみを目的として収集、保存、調査研究、普及、展示する公衆に開かれた非営利の常設機関とされています。

この中の「非営利の常設機関である」というところから、運営の目的は使命の実現、達成であるとして間違いないと考えます。つまり、非営利組織の特徴として挙げられる非財務的目標の優位性から、利用者の利益や当該地域に社会的な利益をもたらすことが組織の目標であり、収益が最上位の目標ではないということです。各博物館が掲げている使命を実現、達成するために博物館は経営されている、存在していると言えます。博物館経営を考える場合、使命の存在は不可欠です。

使命とは、その博物館が人々や地域社会に対して実現したい社会的価値を具体的に述べている文章です。なお、第2回の印刷教材では、博物館の使命がテーマの1つとなっています。