ーーーー講義録始めーーーー
能動免疫について説明します。
能動免疫とは、受動免疫と異なり、宿主自身の体内で免疫反応を誘発し、病原体に対する免疫を獲得することです。自然に宿主個体が獲得する場合と、人工的に弱毒化した病原体などを宿主個体に投与して宿主の体内で免疫を成立させる場合があります。
個体が臨床的発病の有無にかかわらず自然に完遂した際に獲得する免疫が自然能動免疫です。
次に、人工的に病原体を増殖、死滅、または減弱させて感染性をなくした病原体を注射することによって成立するものが人工能動免疫です。
この人工能動免疫を得る方法として予防接種があります。予防接種とは、人工能動免疫を目的として行われる抗原の投与であり、この際に用いられる医薬品をワクチンと呼びます。
ワクチンには、弱毒株の生きた病原体である生ワクチンと、生きた病原体を死滅させた病原体、つまり病原体の一部や破片である不活化ワクチンがあります。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、従来の方法である抗原を用いたワクチンとは異なり、新型コロナウイルスの遺伝子配列から、ウイルスの一部のタンパク質の設計図である**メッセンジャーRNA(mRNA)**を体内に注射します。予防接種を受けた人の体内で、ウイルスの一部をコードするメッセンジャーRNAが特定のタンパク質抗原を生成し、それに対する抗体を生成する方法です。
mRNAを利用して人の細胞に抗原を産生させるこの方法は、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発に大きく貢献し、2023年のノーベル生理学・医学賞の受賞者として、カタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏の2人が選ばれました。ニュースでも大きく取り上げられ、この技術の恩恵を私たちは受けています。