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慢性飲酒とアルコール依存の危険(精神疾患とその治療第10回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

慢性アルコールの有害作用

長年にわたる多量飲酒により、アルコールの慢性的な有害作用が顕在化します。主な身体的影響は以下のとおりです。

  1. 肝障害

    • アルコール性肝炎、肝硬変を引き起こしやすい。

  2. 心血管系障害

    • 動脈硬化や高血圧を促進し、心疾患・脳血管障害(脳卒中)のリスクが上昇。

  3. 代謝異常

    • 糖代謝障害による糖尿病リスク増加。

  4. 栄養障害・免疫低下

    • 栄養吸収不良やビタミン欠乏を招き、免疫力が落ちるため肺炎などの感染症が起こりやすい。

これらの結果、アルコール依存症患者の平均寿命は一般人口より10~20年短く、肝硬変や心疾患、肺炎、自殺などによる死亡率が10倍以上高いという疫学データがあります。


行動面から見た問題の進行

身体的有害作用が重篤化する前に、飲酒行動そのものの非適応性(物質使用障害)が問題になります。たとえば、

  • 職場や学校、家庭での責任を果たせない

  • 飲酒運転などの法律違反

  • 医師から禁酒を指示されているにもかかわらず飲み続ける

といった行動は「アルコール乱用」と呼ばれ、他者や自分への害を承知の上で飲酒を続ける点で明らかに非適応的です。

この段階で問題の深刻さに気づき、飲酒行動を是正できれば回復のチャンスがあります。しかし、ついにはアルコールなしではいられない状態──すなわちアルコール依存症──に至ると、治療介入がより困難になります。


アルコール依存症に至る前の段階で、身体的・行動的リスクを理解し、適切な節酒・早期介入を行うことが極めて重要です。