ーーーー講義録始めーーーー
今回は最終回なので、もう一度博物館展示におけるコミュニケーションの図式を見てみましょう。これは第10回で出てきたものですが、覚えていますか?
はい、覚えています。それは、表現された記号の集合です。これらの記号は、現実の対象から選別されたものを反映していると言えます。そして、ここでの展示コーナーだけでなく、各展示物もまた、集合体としてそれぞれのメッセージを構成しています。さらに、博物館全体の展示がひとつの基本的なメッセージを形成しており、つまり博物館全体のメッセージは「自然と人間の関わり」を示しているのです。
博物館は、本当に複雑なコミュニケーションの仕組みを持っています。しかし、よく考えると、情報の伝達というのは非常に難しいものだと感じました。展示だけでは伝えたい情報が十分に伝わらないため、さまざまな解説の工夫がなされます。たとえば、文字だけでなく音声や映像、場面の再現などを用いることでメッセージが表現されます。さらに、現代では情報技術やデジタル技術が活用され、解説の手法は大きく発展していると言えるでしょう。
それでは、もう一度受信者側のプロセスについて見ていきましょう。受信者は、自分が持っている各種のコード(知識や経験など)を動員して、展示のメッセージに対して解釈や反応を示します。つまり、受信者は自分のこれまでの経験や知識というコンテキストをもとに解釈を行い、その結果、自由にさまざまな情報を受け取っているのです。来館者は、瞬間ごとに意識を働かせながら展示を解釈していきます。
実際、想定以上に多くの要素が関与していることに気づかされました。今回、博物館情報メディアを学ぶ中で、受信者としての反応をどのように受け取るかに関心が湧き、博物館でさまざまなことを学ぶこと自体がとても楽しくなりました。しかし、文字情報だけでは読むのが疲れてしまうため、博物館側としてはデジタル技術の活用などを通じて、来館者に楽しんでもらい、理解を深め、さらには感動を与える工夫を施し、自然に学んでもらう努力が求められているのです。