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イントロダクション - 心理的発達とは #放送大学講義録(成人の発達と学習第3回その1)

ーーーー講義録始めーーーー

 

心理的発達の意味

心理的発達は、人の変化や変容といった言葉と同じように用いられますが、発達心理学の領域では、特に「生涯にわたる比較的持続的で体系的な心の変化」を指す概念として扱われます。
そのプロセスは、加齢とともに経験や環境との相互作用を通じて変化が積み重ねられていくものといえますが、必ずしも一方向的な成長のみではなく、獲得(gain)と喪失(loss)が併存する多方向的な変化として捉えられています。
多くの発達理論では、それは年齢に応じて定められた段階を経るものとして説明されてきましたが(例:ピアジェの認知発達理論やエリクソンの心理社会的発達理論など)、実際には発達のあり方には大きな個人差があり、文化や歴史的背景、社会的文脈によっても影響を受けることが、現代のライフスパン発達心理学や成人発達研究によって示されています。
そのため、心理的発達は、誰もが同じ年齢で同じ段階を同じ順序でたどる硬直した過程というよりも、個人が遭遇する出来事や個人の特性によって異なるものでもあります。

今回は、個人的に遭遇する出来事をめぐって生じる心理的発達と学習との関係を取り上げます。

ゲスト紹介

今回もゲストにお迎えしましたのは、某NPO法人のTさんです。

Tさんは、某NPO法人の創設メンバーとして活動されてこられました。このNPOは、大学院でカウンセリングを学んだ仲間を中心に設立され、平成16年(2004年)からNPOとして活動しています。
キャリアの転換期にある方々にカウンセリングなどキャリア発達の支援を通して、自分らしい生き方を築く手伝いをすることが目的です。

これまで、キャリアについてのインタビューやキャリアカウンセリング、そしてキャリアに関してケースメソッドを用いた学習会を開催してきました。またTさんは、仕事として長く企業の人材開発に携わってこられましたので、仕事の中でもキャリアや成人の方々の特性に関わるお話に接する機会がありました。NPOでの活動だけでなく、仕事での経験も含めてお話しいただきます。

人生における変化と成長

人生は変化なく穏やかに過ごすものというよりも、私たちは生きている間に混乱するような新たな変化や心理的危機など、様々な出来事に遭遇します。

しかし、そのような人生上の出来事との遭遇は、実は学習や成長する機会でもあるのです。成人教育の分野では、人生の危機や大きな転機が、既存の意味枠組みを揺さぶる「方向づけを失わせるジレンマ(disorienting dilemma)」や「ディスジャンクチャー(disjuncture)」として働き、それに応答する過程で学習や自己変容が生じると考えられています。