ーーーー講義録始めーーーー
今日は、第7回「精神障害者への支援・リカバリー思考の支援」についてお話しします。
本講義では、まず、現在精神障害を有する人々への支援において欠かすことのできない「リカバリー」概念とその支援について説明いたします。
次に、印刷教材の事例として、統合失調症の方々によるセルフヘルプグループに参加していたYさんにご自身のリカバリー経験についてお話しいただき、その体験と意味付けを重視するリカバリー、すなわちリカバリー思考の支援における支援者の視点や態度について理解を深めていきたいと思います。
2004年(平成16年)に精神保健医療福祉の改革ビジョンが打ち出され、入院治療から地域生活中心への移行が掲げられました。2021年現在も社会的入院患者が多数存在するという課題が残され、利用可能な社会資源やサービスの量も十分とは言えませんが、精神障害者の地域生活をサポートする環境整備はこの10数年で進められてきました。そして、2018年(平成29年)には、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしができるよう、医療、障害福祉、介護、社会参加、住まい、地域の助け合い、教育が包括的に確保された、精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指すという新たな理念が打ち出され、その取り組みが進められています。
こうした状況の中で最も重要なことは、精神障害者が生活の主体者として希望を持ち、自分の人生を生きることです。ソーシャルワーカーは支援を通じてクライアントとともにその実現を目指しますが、その際に重要となるのが、クライアントを回復の主人公とするリカバリーの概念です。ソーシャルワーカーは、当事者の主体的な回復を目指すリカバリー思考の支援を十分に理解しておくことが求められています。