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ゲーテ『若きヴェルターの悩み』(ヨーロッパ文学の読み方近代篇第5回)

歴史を理解する為にこそ文学は読まれるべきかもしれない。

 

ゲーテ、「若きヴェルターの悩み」。自由への憧れ。18世紀末のヨーロッパで人気に。ヴェルターという主人公。恋愛を通して自由への理解を深める。主体としての。
荒事の傑作。歌舞伎の用語。ドイツのある小さな地方都市の若者が様々な騒ぎを。1774年に刊行。ゲーテの出世作。49年に出生、1832年に死亡。森羅万象に関心を持ち膨大な著作を。25歳に刊行して時代の寵児に。スキャンダラス。特に若者たちには熱狂的に支持される。時代の潮の目を。国際的ベストセラー。
個人的体験の昇華。私的な関係を。法学を修めた後、ヴェッスラーに。72年、ロッテに失恋。友人が自死を図る。人妻の恋に敗れる。私的な関係が反映。1つの三角関係に一本化。圧縮。主人公の悲恋物に留まらない。
書簡体小説。ヴェルターが友人に宛てて書かれた。一人称の主人公が赤裸々に書くことが出来る。自分の感情を生々しく描いているので、気恥ずかしくも。当事者性を覚えさせる。日本の近代小説。夏目漱石の「こころ」。先生の手紙は自分に宛てての。当事者化。
第二版における。ヴェルター初版は大きな影響を。疾風怒濤の文学の代表に。完成度を高めた第二版が。言葉や挿話が補われる。第二版が底本とされることが多い。
読書。ヴェルター全編で重要。書き手がありのままに吐露する心情を受け取る、当事者性の錯覚に。読書の作用や影響を考えて主題化。
読む人としてのヴェルター。学識が在る。古典ギリシア語と英語。18世紀後半、ドイツ文学はシェークスピアを模範に。ホメロスさえあれば読むものは要らない。族長たち。将来を暗示。
同一化的読書。ヴェルター効果という社会現象。ヴェルターの服装や抑制を解かれた強い表現。虚構世界の人物に自らを同一化。ヴェルター自身も同一化。
ロッテやヴェルターが同一の書籍を読むことの効果。同じ詩を心に描く。感情の高まり。世界が二人から消えて無くなった。言葉の力に翻弄される。自分自身の姿を投影する。読書という行為が読者を共通の感情で結びつける。作品それ自身が絆に。
自然。自然の記述がよく出てくる。出会う人々よりも周囲の自然に目を向ける。心境の変化と対応。ゲーテは自然科学にも目を向けた。力として自然を捉える。
自然と絵画。ヴェルターは絵心がある。自然の中で分け入る内に、自然を描くことを断念。技能が無いからではない。自然の息吹に感動して、とても絵の中にすることが出来ない。ロッテの肖像画も断念。その代わりに影絵を。
自然の両義性。自然の破壊的な力。呆然と我を忘れる。荒天に家を飛び出す。洪水に立ち会わずに居られない。憧れに身を焦がす。
ロッテへの思慕。社会的逸脱者との接近。
子どもたち。ヴェルターにとって子どもたちは一番近い存在。可能性が凝縮、多様な力が。不充分な人間なのではなく、大人たちが忘れてしまったものを失わずに居る。子どもたちもヴェルターを慕う。子供の心を持つ。小児的性格。時に感情を抑制できず。子供の理想化。人間観の抜本的な変革。他律的に強いられるのでなく、己の生を自律的に。近代の自由を実現するために。
二人の逸脱者。ハインリッヒの挿話。若農夫は恋に破れて殺人を。ハインリッヒは狂気に。陥った境遇はヴェルターと類似。自然の造形に圧倒されたのと同じ体験。欲望の表白。外なる自然と同様に、内なる自然の両義性。ヴェルターの中にも。殺人を犯した若農夫を救出しようとしたが空しいものに。俺たちは救いようがない。ハインリッヒの情熱。内向し自分の精神を崩壊させる。この上なく幸せだったと懐かしむ。魂の重荷を軽減しようとする人間。
自由と言う主体。ヴェルターは不安定な人間。見方や評価が大きく変わる。不安定がそのまま魅力でも在る。悪戦苦闘は自由という理想と結びつく。逸脱不安定などは魅力的欠点。拘束に対極から立ち向かう。
中庸を生きることと限界を生きること。恋敵のアルベルト。有能で善良であると強調。例外的。優れて魅力的な人物であれば恋の掛け金を上げる。対象的な人物彫琢。制約を受けること無く。情熱を酩酊や狂気のものとするアルベルト。情熱にうつつを抜かす人間は自由というものを失う。情熱、狂気。涼しい顔で無関心で。パリサイ人みたいに神様に。情熱はいつでも狂気スレスレ、それに後悔してない。昔から酔っぱらいと思われてきている。在り来たりの暮らしでも、頭がおかしいと陰口を叩かれる。恥知らず。ヴェルターは自死を内なる力の印と。弱い人間の行うこととアルベルト。ヴェルターは自殺は弱さではないとする。答えは自由に生きる力を抑える制約と戦う。自分を押さえつける制約に一矢を報いることになる。古代ギリシアには運命という人間にはどうしようもない力、畏怖がある。抗いながら破滅する。運命というのは古代の考え方。近代文学では比喩的にしか用いられない。同じ人間たちの作り上げた約束事、それを強いる人物たち。近代文学の主人公たちは自由の為に悪戦苦闘する。ヴェルターの激しい口調。限界において生きること。身分の慣習の求める中庸を求めるのではなく、生の限界に突き進むことこそ、自由を得られる。アルベルトはヴェルターにとって自由に生きることの困難と必要性を示す。
生の限界の経験としての恋愛。ロッテを自由への可能性と見る。後には人妻となるが、恋愛対象としては禁じられた存在。けれどそれだけではない。ロッテと死との親和性。ロッテは死にゆく人たちに付きそう存在。母親の死を巡る。踏み越える者を見送る。ロッテは生身の人間ではあるが、限界の在り処を指し示す存在とも。恋愛が私事として自由となる時代に先駆けて、自由な時代を直感。ヴェルター自身の生の限界が踏み越えられる。
北村透谷。恋愛は人生の飛躍。恋愛ありてのみ人生あり。自由に生きるという問い。日本におけるヴェルターの苦闘は120年遅れて。

 

ヨーロッパ文学の読み方―近代篇 (放送大学教材)

ヨーロッパ文学の読み方―近代篇 (放送大学教材)