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医療ソーシャルワーカーの役割と課題(社会福祉実践とは何か第8回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

では、次に医療ソーシャルワーカーの役割と具体的な業務内容について見ていきましょう。
医療ソーシャルワーカーは、国家資格を有する社会福祉士であり、社会福祉学を学問とする専門職です。1987年に社会福祉士が国家資格化され、またメンタルヘルス領域では主に精神保健福祉士が国家資格となり、こちらは1997年に資格化されました。一般に「医療ソーシャルワーカー」といった場合、精神神経科以外の一般医療に従事するソーシャルワーカーを意味し、精神科領域の場合は従来「精神科ソーシャルワーカー」と呼ばれていましたが、現在は「メンタルヘルスソーシャルワーカー」と呼ばれています。ここでは、一般医療における医療ソーシャルワーカーについて述べます。

さて、医療ソーシャルワーカーの業務や任務とは一体何でしょうか。2002年に改定された厚生労働省の「医療ソーシャルワーカー業務指針」には、病院等の保健医療の現場において、社会福祉の立場から患者が抱える経済的、心理的、社会的問題の解決や調整、援助を行い、社会復帰を促進することが記されています。また、ソーシャルワーカーの倫理規範では、「人間の尊厳」「人権」「社会正義」「集団的責任」「多様性の尊重」「全人的存在」の観点から、クライエントの利益を最優先に考えることが求められています。つまり、医療ソーシャルワーカーの任務は、社会福祉の視点からクライエントの利益を最優先にし、その人およびその周囲の人々と関わることに尽きます。

具体的な業務内容は、先ほど紹介した医療ソーシャルワーカー業務指針に基づき、以下のように分類されます。

  1. 療養中の心理社会的問題の解決・調整援助
  2. 退院援助
  3. 社会復帰援助
  4. 受診・受領援助
  5. 経済的問題の解決・調整援助
  6. 地域活動

これらの業務において、治療やリハビリ、療養が必要な患者やその家族の生活状況を把握し、患者・家族の意思を最大限に反映できるよう、チーム医療の一員として調整を行います。また、治療後の生活を支えるための制度やサービスの紹介、利用支援、さらには関係者や関係機関との連携も重要な役割となります。

しかし、医療ソーシャルワーカーの立場や業務内容から、ジレンマが生じることも少なくありません。たとえば、制度的には効率的かつ質の高い医療提供のために、急性期や回復期を主な機能とする医療機関では早期退院が求められる一方、患者や家族の事情によりそれが難しい場合や、患者・家族の意向と合わないケースも存在します。このような状況下で、利用者主体および利用者の最善の利益に基づいた支援が十分に提供されているのかという葛藤が、医療ソーシャルワーカーに生じるのです。