ーーーー講義録始めーーーー
サービスの4つの特性(続き)――同時性・異質性・プロセスの重要性
以上、サービスの最も顕著な特徴である無形性について詳しく説明しましたが、後の3つのサービスの特徴(同時性・異質性・消滅性/非貯蔵性)は、無形性とも深く関係しつつ、同時生産消費、顧客参加、人的要因、供給能力の制約など複数の要因から説明されます。サービスの4特性(IHIP)はサービス・マーケティングで長く用いられてきた標準的整理ですが、近年はその妥当性を再検討する議論もあります。
【表13-1】サービスとモノの比較(講義用整理)
| 特徴 | モノ | サービス |
|---|---|---|
| ① 形状(無形性) | 有形 | 本質的に無形(活動・過程) |
| ② 生産と消費(同時性/不可分性) | 分離しやすい(在庫・流通が可能) | 同時になりやすい(産出そのものは在庫できない) |
| ③ 品質(異質性/変動性) | 均質化しやすい(標準化・検査が可能) | 変動しやすい(同一品質の維持に工夫が必要) |
| ④ 評価対象 | 結果(アウトカム)の比重が大きい | 結果に加え、提供プロセスも評価対象になりやすい |
■ サービスの第2の特徴:生産と消費が同時である(同時性/不可分性)
モノの場合は工場で生産され、流通システムを通して消費者が購入できる店舗まで運ばれてきます。生産と消費の間に時間があるため、モノは売れなければ在庫しておくことが可能です。これに対してサービスは、提供と利用が同時になりやすく、サービスの産出そのものを在庫として貯めておくことができません。 例えば宿泊サービスを考えてみましょう。300室あるホテルで今日の利用状況が200室だとすれば、利用されない100室が今日利益を生むことはありません。この未使用分を在庫として取っておいて、お盆や年末年始の混雑する時期に300室に上乗せして販売することなどはできないのです(予約で需要調整はできても、未使用分を後日に持ち越せない、という意味です)。
■ サービスの第3の特徴:結果が異質である(異質性/変動性)
この「異質」というのは、いつも同じになりにくい、という意味です。モノは製造過程の中で品質がチェックされ、不良の流出は抑制されやすいので、同一仕様であれば品質は一定であることが前提になりやすいと言えます。一方でサービスは、生産と消費が同時になりやすいことに加え、サービス提供者と顧客、そして提供環境といった要素が関わるため、品質が変動しやすくなります。 サービス提供者と顧客は、その時々によって状況や心理状態が異なります。以前喜んでもらえたからと言って、同じサービスをそのまま提供しても喜んでもらえるとは限りません。また、時間帯や混雑、天候、季節といった環境の変化も、サービスの評価を左右します。例えば、以前宿泊したときに静かで優雅な雰囲気が気に入ったホテルで記念日を過ごそうと予約して行ってみると、ロビーが団体客でごった返していたという場合を想像してみてください。仮に提供内容が同程度であっても、騒がしいロビーという環境によって、サービスの評価が下がる可能性があります。
■ サービスの第4の特徴:結果とプロセスが重要である
モノを購入する動機は、機能やデザインなどさまざまなものが考えられますが、きちんと機能しない場合は不良品として交換の対象となります。モノの場合、結果としての品質(アウトカム)の比重が大きいのです。一方、サービス品質の評価は、結果だけでなく、提供の過程(プロセス)も含めて行われることが明確に指摘されています。 例えば、結果としては希望通りにはならなかったけれども、サービス提供者が希望に沿うように一生懸命努力してくれたという場合、顧客は「自分のためにあんなに一生懸命やってくれた」というプロセスへの評価を含めて全体評価を行う可能性があります。逆に、結果が良くてもプロセスが悪いために評価が下がってしまうこともあり得ます。例えばタクシーを利用した際に、目的地には着いたけれども途中運転が荒くて怖い思いをしたという場合、結果は達成されていても、プロセスの印象が再利用意向を下げることが考えられます。
■ サービス提供者に求められる姿勢
サービス提供者は、自分が提供するサービスの特徴を理解する必要があります。サービスは無形であるため、購入前に品質を完全に見極めることが難しく、利用の中で経験され、事後的に評価されやすいという性格を持ちます。そのうえサービスは提供と利用が同時になりやすく、やり直しが効きにくい場面も多いため、顧客との一度きりの相互作用の機会で、安心感や納得感を持ってもらえるように働きかけることが重要になります。 初めてサービスを利用する人、いつも利用している人、時間がなくて急いでいる人、利用に不安を感じている人など、顧客の状況はさまざまです。そのため、すべての顧客に一律に時間をかけて丁寧に対応することが、必ずしも良いサービスとは限りません。急いでいる顧客やいつも利用して慣れている顧客には、必要最小限の説明でスムーズに進める方が良いサービスだと評価されることもあるでしょう。これは、サービス評価が顧客の主観や状況に左右されやすいこと、そしてプロセスが評価に含まれやすいこととも関係しています。 したがって、サービス提供者は、顧客の目線に立ち、顧客の状況やニーズに細心の注意を払いながら、自分の感情をコントロールしつつ、その場で最もふさわしいと思われるやり方でサービスを提供する必要があるのです。
