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幻の私小説家・藤澤清造(放送大学特別講義)

藤澤清造はともかく、西村賢太氏の小説は読んだら面白いかもしれない。

 

藤澤清造。西村賢太。苦役列車を始め多くの私小説を。自分の身辺に題材を取った。全くのノンフィクションとは違い。小説が入るので小説。自分が経験したことを書くが100%そのままではない。藤澤清造。普通に大正時代に活躍した私小説家。根津権現裏。忘れられた存在とされた。23歳の頃に日雇い労働の帰りに古書店に。早稲田か本郷など。そのうち一巻に根津権現裏が。興味本位に立ち読みして面白そうだったので買って読んでいた。大正時代の匂いが。時代への怒りが。普遍的なところが。共鳴できるが、抄録もので半分くらい削られていた。6年後に生活は更にひどくなり、酒を飲んで暴力をふるい四面楚歌に。落ち込んで苦しいんで根津権現裏の世界を思い出して読み直してのめり込む。明治22年に能登地方で生まれる。10歳で丁稚奉公に。印刷所などで働き出す。足で骨髄炎に。満足に手術が出来ず足を引きずる後遺症を。数えで18歳で上京。港湾労働や書生などを。東京へはどういう目的で?姉を頼るつもりで。最初は俳優志望。旧劇を。縁故を伝ったが足のせいで絶たれる。その代わりに文士に切り替える。演劇雑誌に勤め始める。多くの随筆や評論を書く。22歳から10年。大阪の兄の家に居候する。半年かけて書いたのが根津権現裏。東京に行きアチコチに持ち寄って出版。場所としては東京大学に近い。舞台は大正元年の東京。一人称で。足に骨髄炎を病む。未来の希望がない状態。ただ一途に金が欲しい。金があれば今から飛んでいって名医の診察を。入院や手術も。窮迫していては容易ではない。誰一人会って力になってくれる人は居ない。窮状を訴えるところもない。段々苦痛が加わり歩行が自由にならなくなったら。あの区役所に泣きついて相談するしか無いと。墓の中に入るような。主人公の状況を。カネがない。骨髄炎に。数え切れないくらいくり返される。区役所に手当を。今で言う生活保護?この頃はレベルが違うかもしれないが今でも貧困が。主人公である私には親友がいる。親友岡田が死んだという知らせ。鮮血。どす黒い。死に様がはっきり見えてきた。操られているように変に歪めて足を突っ込んで。岡田の下宿へと。岡田の兄が。自殺であり入院していた精神病院のトイレで。下宿で岡田の兄と私が会話。時々に回想が。基本的に堂々巡り、岡田の死も貧困が原因に。自分の下宿に帰り着いて終わる。岡田は微笑をたたえて私を。目を閉じてしまった。しばらく頭を左右に。感じられるのは足の疼痛。身を刺し貫く。蜂の巣のように。苦しみの雫がたらたらとそこいらいっぱいに流れる。上野の鐘が鳴り出す。いかにも静かに聞こえるが、悲しく聞こえる。膿汁の音と一緒に。いつまでもそのままにじっとしている。恐ろしい最後を待つように。代表作の最後のシーン。単語レベルでの影響をかなり受けている。発見が。この小説は足が辛いというところから始まり同じところで終わる。新しいステージに、というのがよくあるが、最初から一周りして最後は同じところで終わる。苦役列車も同じところに。変に作り込まないのがリアル。骨髄炎。作者と一緒。一応は足を変えていてずらす。名前も少し変えたりする。現実そのままではないが。大雑把にいって私小説。書かれていることはフィクションもどきだが。実際に親友も自殺している。私小説である根津権現裏。路面電車に乗っているシーン。ふくよかな前髪の女性が座っている。特色は目。切れの長い。エメラルドや磁石のように。その目は男の胸に。喜ばせてくれる。じっと見ていると私の胸に。別れた女性の面影が。その目つきが不思議なくらい似ている。今しがた通ってくる間に心持ちを深く思い返させる。これから雨に打ち濡れて部屋に帰ると独り寝しなければならない。電車の下敷きになって殺されたいと。しかし路面電車は先に駆けるのみ。自分の無力さ。時代背景が大正元年。東京は路面電車が多く。和服の人もまだ多い。貧しいが身なりはきちんとしてようとダンディズムな。カッコよさを。描写にこだわりを。吉原の女性と付き合っていた。当時の風俗が分かる。満たされることのない鬱屈したエネルギー。衝動にかられながら人間として踏みとどまる。実際に実行して刑務所に。それも出来なければ自決するか、さもなければ不自由がしないよう成功する。いつまでもエネルギーを持ち煩悶する。一口に言うと絶望とレジスタンス。電車に乗りながら転覆すれば良いと、アナーキーにもなれないが。上手く小説的な展開を。考え込んで作っている。文体も癖がある。当時として古臭い独自の。アクが強い。森鴎外の作品も読み込んで。向学心を持っていた。主人公の私は団子坂を。森鴎外の家があった。ご近所さんだった。好きだから近くに?森鴎外の葬儀には行っている。すれ違っていた?江戸川乱歩の作品の背景を。戯作者の精神。小説に出てくるセリフや言い回し。昔の落語の言葉や江戸時代の。かなり突出しているので受け付けない人には無理。江戸時代のエンターテインメント。180度違う?融合はしている。一種の自然主義。一般的な私小説とは違うところに注目して欲しい。辛いことが描かれているが、掛け合いの部分では笑わせる。落語に通じる。単に隠逸した作品から脱却できない。所々におかしさがある不思議な小説。根津権現裏。売れ行きはあまり良くなく。翌年に関東大震災が。飛び回りルポルタージュを。独自の視点が。今で言う風俗街の焼け死んだ人を。重点的に記す。当時としても異色。売れっ子作家?1年位は。短い。文芸誌にもゴシップが書かれる。注目される存在。1年後には小説自体も面白くなく落ち目に。消えていってしまった?菊池寛と仲違いして文藝春秋にも書かせてもらえなかった。我が強いので仲違いを。反菊池寛の雑誌には描いていたが。短編でも治療費の捻出と金の貸し借り。たまには遊ぶ金を親族に断られて。貧困と病気にほぼ尽きる。私小説から離れようと様々な試みはしたが付け焼き刃。プロレタリア文学にも通じるはず?いかんせんイデオロギーがなく個人の怒りだけで先細りに。その分は等身大だが。その後の人生。段々小説が売れなくなると内縁の妻と暮らすように。既に性病にかかっていた。治療費がかさみますます困窮に。生活上も離れる。昭和6年に性病からか不可解な行動に。暴力もあり昭和7年に行方不明に。結局は凍死。近年は再評価が。今後の受容のあり方。意外なほどに現在の読者に受けている。短編集も出してもらえる。かなり面白がってもらえているが、現在とイコールでもない。現在と結びつけたくない。質が違う。結びつけると安っぽくなってしまう。個人的な思い込みで読んでもらいたい。価値を感じる人が読みつがれるのが小説。読む人を選ぶ作家だが貴重な人。

 

根津権現裏

根津権現裏

  • 作者:藤沢清造
  • 出版社/メーカー: 聚芳閣文芸部
  • 発売日: 1926/01/01
  • メディア:
 

 

 

根津権現裏 (新潮文庫)

根津権現裏 (新潮文庫)

  • 作者:藤澤 清造
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06/26
  • メディア: 文庫
 

 

 

藤澤清造短篇集 (新潮文庫)

藤澤清造短篇集 (新潮文庫)

  • 作者:藤澤 清造
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/02/27
  • メディア: 文庫
 

 

 

苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車 (新潮文庫)

  • 作者:西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/04/19
  • メディア: 文庫