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心理的危機と学習 #放送大学講義録(成人の発達と学習第3回その7)

ーーーー講義録始めーーーー

 

移行期の7段階モデル

先程の印刷教材の図、移行期に付随する7段階モデルによれば、第6段階は「経験する意味の探求」、そして最終段階は「変化に伴う安らぎの境地」、すなわち変化の意味を自分の中に取り込み、人生の一部として統合していく段階になるとしています。人が移行期を経ていく過程を段階として捉えるモデルとしては、Hopson や Adams らによる7段階モデルがよく知られており、そこでも第6段階は「意味の探求(Search for meaning)」、最終段階は「内面化・統合(Internalisation/Integration)」とされていますので、印刷教材の表現はその日本語的な説明と考えることができます。 まさにその例ですね。

心理的危機への対応

心理的危機を伴うライフイベントへの対応では、状況をどのように評価・認知するか(一次・二次評価)、どのようなコーピング方略をとるか、そしてそれを支えるソーシャル・サポートの有無や、対応するために活用可能な資源や能力の範囲が影響すると言われます。これは、Lazarus と Folkman が提唱したストレスとコーピングの「取引的モデル」にも通じる考え方で、個人と環境との関係をどう捉えるか、その時に利用できる資源やサポートがどれだけあるかが、ストレス反応や適応の仕方を左右するとされています。

学習研究が重要視していることは、学習活動への参加が、成人にとってライフイベントや過渡期に対応する方法の1つと考えられていることです。成人教育や生涯学習の領域では、Mezirow の変容的学習論などを中心に、人生の転機や「当惑のジレンマ」をきっかけに、自分の経験の意味づけを批判的に振り返り、新しい枠組みへと再構成していくプロセスが重視されています。

Tさんが紹介してくださった方の例にもありますが、ライフイベントや移行期における心理的危機にあって、その意味を探求する過程で、人は学習活動を求めると言われます。Tさん、どう思われますか。

Tさん:
確かに、私がお会いした方々の多くは、転機や危機のあるときに学習活動をしていたと思います。新しい知識や技能を学ぶこと自体が支えになっていたり、「自分にもまだできることがある」という感覚につながっていたりしましたね。

まとめ

今回は、成人の心理的発達について、発達段階説とライフイベントという2つの視点から考えてきました。

発達段階説では、ハヴィガースト、エリクソン、レビンソンの理論を紹介し、年齢に応じた発達課題や移行期の存在を学びました。一方で、ライフイベントの視点からは、予期せぬ出来事や心理的危機が、実は学習と成長の機会となることを事例を通して理解しました。エリクソンや Mezirow らが指摘するように、こうした危機や当惑のジレンマは、自己理解を深め、これまでの意味づけを問い直す契機ともなり得ます。

Tさんの豊富な経験から紹介していただいた事例は、中年期の心理的危機、積み残した課題との向き合い、そして学習を通した自己変容のプロセスを示すものでした。

人生における変化や危機は避けられないものですが、それらは同時に私たちが学び、成長する貴重な機会でもあるのです。学習活動は、単に知識を得るだけでなく、人生の転機を乗り越え、新しい自分を発見するための重要な手段となります。

次回は、さらに成人の学習について深めていきたいと思います。

 

参考表:移行期に付随する7段階モデル(Hopson らによる例)

※印刷教材で扱っているモデルと同系統の代表例を、確認用に整理したものです。

段階 英語名(例) 内容イメージ(簡略)
第1段階 Immobilisation / Shock 凍りつき・ショック。感情が追いつかない状態
第2段階 Minimisation / Denial 「たいしたことではない」と小さく見積もろうとする
第3段階 Depression / Awareness 気分の落ち込み、現実の重さへの気づき
第4段階 Acceptance 現実を受け入れ始める段階
第5段階 Testing out 新しいやり方を試す。行動的に「試行」してみる
第6段階 Search for Meaning 変化の意味を深く考え、「これは何だったのか」を探る
第7段階 Internalisation / Integration 新しい意味・自己像を内面化し、人生に統合する