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グリーフサポートの社会的階層モデル(グリーフサポートと死生学第1回) #放送大学講義録

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自分が関われる、または自分たちで始められるグリーフサポートは色々あります。テキストでは解説していませんが、第2章で紹介したスコットランドの理論では、死別体験者が必要とする多様なグリーフサポートを社会的に必要性が高い順に、最下層から順に4階層にまとめています。

最下層には基本的な情報・知識の提供があり、その上の第2層にはグリーフを分かち合う機会の提供があります。さらにその上の第3層には電話相談など個別支援の提供があり、最上層には医療者などによる専門的な支援の提供があります。

最下層の情報的サポートが最も必要性が高いということは、サポート対象者数が最も多いということでもあります。また、上の階層になるほどサポート対象者数が少なくなっていくため、形としては上に行くほど先細りしていく三角形の階層モデルになっています。

この階層モデルによると、基本的な知識・情報の提供はグリーフサポートの基盤であり、社会のあらゆるセクターでいつでも獲得可能なサポートとして広く普及されるべきものであることが確認できます。情報的サポートの提供は、グリーフを抱える当事者の支援だけでなく、社会全体に対するグリーフおよびグリーフサポートの意識啓発においても重要です。

社会の多数派がグリーフやグリーフサポートをどう考えるかによって、支援の広がりが促進されたり、逆に阻害されたり、喪失体験者のグリーフが和らげられたり、逆に複雑化したりします。特に、喪失体験者が、テキスト第1節第6項「社会的側面」で挙げた「公認されない悲惨」によって二重、三重の苦しみに直面させられることがないように、グリーフに関する知識の提供による意識啓発を社会に対して行っていくことは重要です。

「公認されない悲惨」という概念は、社会の多数派が、喪失体験者がグリーフを抱えているのに、その事実を認めなかったり、サポートを求めることを容認しなかったりすることをうまく説明しています。テキストで列挙したように、「公認されない悲惨」は5つに分類されます。

1つ目は、喪失対象との関係が認められないケースです。姻戚関係にないパートナーや元配偶者、あるいは友人や職場の同僚などは遺族ではないので、遺族ほどグリーフを体験しておらず、遺族に認められている支援を受ける権利もないというものです。

2つ目は、喪失の事実が認められないケースです。第15回授業で取り上げるペットとの死別がその例です。ペットなのだからまた買えばいいと言われたり、ペットロスでは有休休暇を取れなかったりするのが具体的な例になります。

3つ目は、喪失体験者の負担能力が認められないケースです。幼い子供や認知症の高齢者の死別体験について、幼いから、認知症だからどうせわからない、悲しんでいるはずがないという偏見が挙げられます。

4つ目は、喪失状況がグリーフにふさわしいと認められないケースです。自死による死別や社会的スティグマの強い疾患による病死などが典型例です。

最後に5つ目は、悲嘆の表現の仕方が認められないケースです。男のくせに葬式で大泣きしたり、逆にあの奥さんが涙一つ流さないなど、社会のジェンダー役割や規範から逸脱していると見なされるといったケースが挙げられます。

「公認されない悲惨」という概念が気付かせてくれるのは、グリーフが喪失体験者個々人の内的体験であるということだけでなく、社会が生み出し、押し付けるものでもあるということです。グリーフサポートを展開していく上で、グリーフのこうした社会的側面を理解し、対応していくことも忘れてはなりません。