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老年期の発達課題と新しい区分(発達心理学特論第14回)#放送大学講義録

-----講義録始め------

 

さて、続いて老年期の発達課題について見ていきたいと思います。こちらをご覧ください。エリクソンによる老年期の課題は「統合対絶望」であり、基本的な強さを「英知」としています。老年期は発達段階の最後の段階で、それまでの段階を統合する段階と位置付けています。

その一方にある失調要素としての絶望がこの時期には目立ちますが、「英知」という人間の強さによってそれに立ち向かえると言えます。この老年期は、それまでの発達段階の課題などの特質が改めて繰り返され、新しい価値を持ち、個人の中に取り込まれていきます。そして、エリクソンはこの時期の「英知」を重視しています。エリクソンは「英知」について、その語源を調べ、「見ること、知ること」として、それは目を見開くということ、見分けるという識別、見抜くという洞察に関連するとしました。そして、「英知」は、何を見て何を聞くべきかについて的確な指針を与え、我々個々人および我々が住む社会にとって重要なもの、永続するもの、役に立つものに我々の能力を集中させる役割があると述べています。

さらに、エリクソンは80歳代後半から90歳代の高齢者の目を通して人生周期の最後の段階を見つめ、理解することが迫られていると述べ、第九の段階を新たに設定し、この時期の課題を明確にする必要性を指摘しました。その一つの例として、老年的超越を取り上げています。

レビンソンは、老年期を60歳からとし、60歳から65歳を老年期の過渡期としました。中年期と同様に、現実に直面し、肉体的な衰えを実感する時期であり、老化と寿命という問題に直面します。加えて、近親者や友人などの病や死が増えると同時に、自分自身の健康の不安にもさらされると指摘し、老年期の過渡期は、老年期にふさわしい新しい形の若さを持ち続けることだと述べています。そして、老年期の第一の発達課題は、社会との関わりおよび自分自身との関わりに新しい形のバランスを見つけることであると述べ、生活をもっと自由に選択できる可能性を持つべきだと主張しています。加えて、レビンソンは、80歳以上生きる時代になってきたことを踏まえ、80歳頃から始まる晩年期を提案し、60歳から65歳以上で一つの発達段階とすることに疑問を呈しています。

さて、ここまで見てきたように、日本は人生100年時代と言われ、平均寿命も80歳を超えています。エリクソン、レビンソンが老年期を捉えた時代から見ると、現代はさらに老年期の期間が長くなってきています。そのため、エリクソン、レビンソンの指摘にもある通り、老年期をさらに区分して捉えていくことが必要になってきていると言えるでしょう。