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肥満・BMIと慢性炎症の関係解説(食と健康第14回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

代表的な生活習慣病には、肥満、糖尿病、高血圧、がん、脳卒中、心臓病などが挙げられます。
この中でも肥満は、他の生活習慣病の発症や悪化の要因となる重要な疾患です。

近年の研究により、これらの生活習慣病の発症や進展には「慢性炎症」が関与していることが明らかになってきました。

「炎症」というと、一般的には急性の炎症を思い浮かべるかもしれません。
たとえば、怪我をした際に、その部分が赤く腫れ、熱をもち、痛みを感じるようになります。
これらは、損傷を受けた組織が炎症反応を起こすことによって発現する症状であり、「急性炎症」と呼ばれます。
この急性炎症は、損傷の修復や治癒とともにおさまるのが一般的です。

一方で、「慢性炎症」は、明確な症状は出にくいものの、身体の内部で持続的に炎症が続く状態を指します。
この慢性的な炎症が、生活習慣病を含む多くの疾患の基盤となっていることが注目されています。

なかでも肥満は、現代人の健康に重大な影響を与えており、運動不足や食生活との関連が非常に強いことが分かっています。
肥満は単に体重が多い状態ではなく、脂肪組織が過剰に蓄積した状態を意味します。

日本肥満学会では、健康障害を伴い減量が必要とされる肥満を「肥満症」と定義しています。
また、肥満は「メタボリックシンドローム」と呼ばれる疾患群の要因にもなります。

現在、最も広く用いられている肥満度の指標が **BMI(Body Mass Index)**です。
BMIは、体重(kg) ÷ 身長(m)^2 によって算出される指数であり、肥満ややせの判定に利用されます。

日本肥満学会によるBMIに基づいた判定基準は以下の通りです:

判定区分 BMIの範囲
低体重(やせ) BMI < 18.5
普通体重 18.5 ≦ BMI < 25
肥満(1度) 25 ≦ BMI < 30
肥満(2度) 30 ≦ BMI < 35
肥満(3度) 35 ≦ BMI < 40
肥満(4度) BMI ≧ 40

では、日本人の肥満者の割合はどの程度なのでしょうか。
**令和元年度(2019年)の「国民健康・栄養調査」**によれば、**成人の肥満者の割合は、男性が33.0%、女性が22.3%**でした。

ただし、BMIは体重と身長のみを用いた単純な指標であるため、筋肉量体脂肪率、**脂肪の分布(内臓脂肪型か皮下脂肪型か)**などの情報は得られません。
したがって、「どのような太り方か」や「健康リスクの高さ」までは、BMIだけでは正確に把握することはできないのです。