ーーーー講義録始めーーーー
国際事実調査委員会と国際刑事裁判制度の整備
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国際事実調査委員会(International Fact‑Finding Commission)
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追加議定書第一議定書(AP I)第90条に基づき設置される常設機関で、15名の委員が構成員です。
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ジュネーヴ諸条約およびAP Iで定める重大違反行為(grave breaches)やその他深刻な侵害について事実調査を行い、条約義務の履行確保のための**調停機能(good offices)**を提供します。
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ニュルンベルク/東京裁判と常設国際刑事法廷の創設
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第二次大戦後、ニュルンベルク国際軍事法廷(1945–46年)および東京国際軍事法廷(1946–48年)が、平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪を審理しました。
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ジェノサイド条約(1948年12月9日採択・1951年1月12日発効)は、加盟国に集団殺害罪(ジェノサイド)の処罰義務を課しましたが、即時の常設裁判所設立には至りませんでした。
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ICTY/ICTR の設立と移管
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ユーゴスラビア紛争における民族浄化、ルワンダ虐殺の勃発を受け、国連安保理は決議827号(1993年5月25日)で**旧ユーゴスラビア国際刑事法廷(ICTY)を、決議955号(1994年11月8日)でルワンダ国際刑事法廷(ICTR)**を設立。
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両法廷はジュネーヴ条約のgrave breaches、ジェノサイド条約違反、人道に対する罪を審理し、ICTRは2015年12月31日に、ICTYは2017年12月31日に閉廷。その機能は国連国際残余メカニズムへ継承されました。
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国際刑事裁判所(ICC)の補完性と管轄
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ローマ規程は1998年に採択、2002年7月1日に発効し、2003年に活動を開始した**国際刑事裁判所(ICC)**が常設の法廷として機能します。
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ICCは、①ジェノサイド、②人道に対する罪、③戦争犯罪、④侵略犯罪(2010年カンパラ改正会議で定義/2018年7月17日発効)を対象に、補完性の原則の下で、加盟国が真摯に捜査・起訴しない場合に限り審理を行います。また、国連安保理の付託や検察官の自発的捜査開始も可能です。
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個人責任と指揮責任
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国際刑事法廷では、個人の刑事責任を追及し、**指揮責任(command responsibility)や共同犯罪企図(joint criminal enterprise)**の理論を適用します。
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戦争犯罪・ジェノサイド等の時効は適用されず、国家免除や恩赦の主張は認められません。
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以上の仕組みにより、国際人道法の重大違反行為に対して多層的かつ継続的な責任追及と履行確保が図られています。




