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国際人道法適用範囲の現代規定(国際法第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

武力紛争法(国際人道法)を適用する際には、紛争の性質への注意も必要です。

かつての近代国際法では、戦時国際法(交戦法)が適用されるには、国家による宣戦布告などによって法的に「戦争状態」が認められる必要がありました。しかし、現代の国際人道法は、そうした意思表示の有無ではなく、実際の武力紛争の存在という客観的事実に基づいて適用されます。

1949年ジュネーブ諸条約共通第2条1項は、「宣戦布告の有無や戦争状態の承認にかかわらず、本条約を遵守しなければならない」と定め、条約の適用要件を宣言的な意思表示から、武力行使の事実へと転換しました。

また、従来は国家間戦争に限られていた適用対象を内戦(非国際的武力紛争)にも拡大する必要が認識されました。1936~1939年のスペイン内戦の経験を踏まえ、1949年ジュネーブ諸条約では以下の要件を満たす場合に共通第3条が適用されます。

  • 紛争が締約国領域内で生じること

  • 国家軍と組織的武装集団、または武装集団相互間の武力衝突であること

さらに1977年追加議定書第二議定書は、「領域の一部を実効支配する組織的武装集団」が関与する非国際的武力紛争にも適用範囲を詳細化しました。

一方、1977年追加議定書第一議定書第1条4項では、「植民地支配および外国の占領に対する人民の戦い並びに人種差別体制に対する人民の戦い」(民族解放運動)も国際的武力紛争と同様に扱うと規定し、これら民族解放運動主体はジュネーブ条約および1977年追加議定書第一議定書の遵守義務を負うとともに、同条約・議定書による保護を受ける地位を獲得しています。

以上のように、国際人道法は宣戦布告の有無や交戦当事者の法的地位を問わず、すべての交戦当事者に平等に適用されることを原則としています。