ーーーー講義録始めーーーー
現代国際法で「武力行使禁止原則」が確立すると、かつて「武力行使権」を前提に設計されていた中立法は存立が困難になると考えられました。武力紛争が発生すれば、(1)双方の違法武力行使、(2)第三国の攻撃、(3)非国際的紛争の国際化など多様な状況が想定され、単純に「違法=侵略国」と断じられないからです。
また、国連憲章第39条で「平和への脅威」を認定し、第41条(経済制裁等の非軍事措置)や第42条(軍事措置)に基づく集団安全保障制度は、中立国の義務を一律に義務づけるものではありません。第41条措置は加盟国に対して法的拘束力を持つ一方、第42条の軍事措置は第43条特別協定が未締結で事実上実施されていません。このため、湾岸戦争(1991年)やコソボ紛争(1999年)、イラク戦争(2003年)では、多くの国が集団安全保障措置に参加せず、中立または非同盟の立場を維持しました。
中立国の主要機能は、(1)領域不使用義務で交戦国の軍事行動を防止し、(2)不偏不党義務でいずれの交戦国にも公平に接し、(3)継続航海原則・中立貿易権・戦時禁制品規定などで非軍事的国際取引を保護することにあります。これらは1907年ハーグ第5・第13条約で成文化され、慣習法としても確立しました。
さらに、現代ではjus ad bellum(武力行使の正当性)とjus in bello(交戦中の規範)の両面で中立が機能し、国連憲章第51条(自衛権)との調整や、NATO・ASEANなど地域安全保障機構、平和維持活動(PKO)への参加と中立保持の問題が新たな課題となっています。
以上より、中立制度は「集団安全保障下でも非交戦国の権利・義務を確定」する核心的枠組みとして、現代においてもなお重要性を失っていません。




