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国際人道法における復仇規制(国際法第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

国際人道法上の「復仇(reprisals)」について、正確な概念と現代的制限を整理します。

  1. 復仇の定義と法的要件
    復仇は「本来違法となる行為を、相手国の国際人道法違反に対する対抗措置として例外的に行う」制度です。正当化には以下すべてを満たす必要があります:

    • 他に効果的手段がないこと

    • 相手国の違反の重大性と復仇の規模・性質が均衡していること(比例性)

    • 復仇は違反行為を行った相手国に対してのみ行うこと(相互性)

    • 目的は将来の違反防止であり、処罰ではないこと

    • 事前に明確な警告を発し、相手国に是正の機会を与えること

    • 相手国が違反を停止すれば直ちに中止する一時的措置であること

  2. 明文禁止規定
    ジュネーヴ諸条約自体にも復仇禁止規定があり、以下の条項で文民・民用物等への復仇を明文で禁止しています:

    • 第一ジュネーヴ条約46条(傷病者・病者)

    • 第二ジュネーヴ条約47条(海上の傷病者・難船者)

    • 第三ジュネーヴ条約13条(捕虜)

    • 第四ジュネーヴ条約33条(文民)

    • 追加議定書第一議定書51条6項(文民への復仇禁止)

    • 同52条1項(民用物への復仇禁止)

    • 同53条(文化財・礼拝所)、54条(生存に不可欠な物)、55条(自然環境)、56条(危険施設)への復仇禁止

  3. 歴史的文脈と現代規制
    復仇は19世紀の国際法から認められていたものの、武力紛争における違法行為の応酬を招くとして、1977年追加議定書やジュネーヴ諸条約で大幅に制限・禁止されました。現代では、国家責任法上の対抗措置(countermeasures)と区別しつつ、国際刑事裁判所(International Criminal Court, ICC)による個人の戦争犯罪責任追及が代替手段として機能しています。

  4. 非国際的武力紛争での取扱い
    共通第3条および1977年追加議定書第二議定書では、一国領域内の政府軍と組織的武装集団間の紛争においても復仇を含む集団処罰を禁止しています。

以上により、復仇は例外的かつ極めて厳格に制限された制度であり、文民保護・比例・予防の原則と明文禁止規定によりほぼ廃止に近い形で運用されています。