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戦争犯罪処罰制度の多層構造(国際法第15回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

戦争犯罪人の処罰制度を説明します。


  1. 第一~四条約(ジュネーヴ条約)の正式名称・条文

    • 第一条約:戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第一条約)第50条【grave breaches】

    • 第二条約:海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第二条約)第51条【grave breaches】

    • 第三条約:捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第三条約)第129条【grave breaches】

    • 第四条約:戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第四条約)第146条【grave breaches】

    各条約締約国は、自国内でこれら重大な違反行為を行ったとされる者を「aut dedere aut judicare(引き渡すか裁判にかけるか)」の義務に従い捜査・起訴しなければなりません。

  2. 普遍的管轄権と国家責任

    • 締約国は自国領内外を問わず、重大な違反行為を行った者を捜査・起訴するか、他国への引き渡し義務を負います(aut dedere aut judicare)。

    • この義務は慣習国際法としても確立しています。

  3. 国際刑事裁判所(ICC)の補完性と付託

    • ICC(International Criminal Court, ICC)はローマ規程に基づき、**補完性の原則(complementarity)**の下で、加盟国が適切に捜査・起訴しない場合に限り介入します。

    • また、国連安全保障理事会の付託や、検察官の自発的捜査開始(self‑referral)が可能です。

  4. 歴史的先例と中間期国際裁判

    • ニュルンベルク国際軍事法廷極東国際軍事法廷を皮切りに、ICTY(旧ユーゴスラビア国際刑事法廷)、**ICTR(ルワンダ国際刑事法廷)**などが設置され、国際刑事法の歴史的発展を担いました。

  5. 指揮責任と共同犯罪企図

    • 指揮責任(command responsibility):上級指揮官は部下の戦争犯罪について責任を問われます。

    • 共同犯罪企図(joint criminal enterprise):集団で犯罪行為を遂行した場合の共同行為者責任が認められます。

    • いずれもローマ規程に規定され、ICCでも適用されます。

  6. 利益保護国制度との区別

    • 利益保護国(protecting power)は中立国が務め、戦争犯罪処罰とは異なる「監視・仲介」制度です。ICRCが代理を務める場合も、交戦当事国双方の同意が必要です。

  7. 現代的課題

    • PMC構成員テロリストの地位、恩赦の可否国家免除・外交免除被害者の権利など、さらなる論点が存在します。

  8. 非国際的武力紛争でも処罰義務

    • 共通第3条および第二追加議定書(AP II)でも「grave breaches」に該当するとされる重大違反行為は処罰義務が課せられます。


以上により、戦争犯罪人処罰は国内外の裁判所、普遍的管轄、ICC、歴史的国際法廷を含む多層的な法制度によって確立されています。